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「pieces/渡り鳥のソムニウム」

2019,3, 29 / Win / ノベル / Whirlpool




【あらすじ】

『ここは天使が眠る町』

天使が安らかに眠れるように毎朝子守唄を捧げている。
子守唄で人々は目覚め一日が始まる。
そんな不思議な伝承のある町ミッテベル。

天使だけではなく人間だって不思議な夢を見ることがある。
イメージした人間の見る夢を渡り歩き、登場人物の一人になる……。
「高坂 燕」はそんな力をいつからか持ち、
他人の夢を渡り歩くべく一日の大半を睡眠に費やしていた。

そんな彼がある日、古ぼけた洋館の窓辺に一人の少女の姿を見かける。
儚げな少女は美しく、燕は一目で心を奪われる。
彼女のことを知りたい。
その一心で燕はつい彼女に対し能力を行使してしまうが、それは失敗に終わる。

少女……「君原 結愛」は燕に告げる。
結愛も燕と同じく他人の夢を見ることが出来る不思議な力の持ち主だった。
ただし、彼女は見る夢を選ぶことはできない。
それどころか、彼女が毎夜見せられるのは誰かの悪夢。
悪夢に蝕まれた結愛は、いつしか眠りを拒むようになっていた。

眠らない少女と、眠り続けたい少年。
二人の夢が重なるとき、伝承は再び動き始めるのだった。

この果ては、君と落ちる微睡みの国。


【感想】
ここ最近思うのことがありまして。
アダルトゲームに限らず創作物全般に言えるかもしれないのですが、
新品で買うというのはその作品を支持するということなんですよね。
ここでいう支持の対象は、良い原画家やシナリオライターの起用だったり、
ゲームデザインやシステムだったり、制作コンセプトだったりと、プレイ前から把握できる要素になります。
たかがエロゲを買う時にこんなことを考えているのは、おそらく自分だけだと思うのですが、
エロゲ業界の多様性を維持するために自分ができることっていうのは、
普段とは異なった制作コンセプトを掲げた作品だったり、ゲームデザインに工夫がされた作品を買うことしかないんじゃないかって。

自分は散々レビュー内でゲームデザインが云々といったりしますが、
そういう作品に限って面白そうに見えない…ので見送ることがちまちまあります。
なので結局本能に従って新作を買っていたのですが、いやそれじゃダメだろうと。
たとえつまらなさそうでも、何かしらに挑戦するクリエイターの姿勢に敬意を払ってやろうじゃないかと、思い直したわけです。


さて、本作のコンセプトはどうやら「自分たちが今作れる一番のシナリオ」らしいです。
つまりはストーリー重視の作品を目指したというわけですね。
Whirlpoolの作品は実はやったことがないし、絵目的以外でやる必要性を感じてはいませんでしたが、
いつもと異なる作風で挑むというのであれば、
たとえ企画やライターから外れ臭がしようとも買うのが、心を入れ替えた自分!

ということでプレイしたのですが、想定通りダメでした。
悲しいなぁ。


本作はノベルタイプのADVで、選択肢によってヒロインごとにシナリオ分岐するタイプです。
そして、オールクリア後にTRUEが解放されます。

ストーリーはローファンタジー系です。
序盤はヒロインらとの日常→個別シナリオではイチャイチャ→シリアスとなり、重要な設定が小出しされていき、
最後に全貌がわかるというタイプといえばわかるでしょうか()

こういう、設定を小出ししていき、設定そのものがストーリーを構成するタイプの問題点のとして、
プレイヤーを置き去りにすることや、設定を小出しにするため作られた話がつまらないという点が挙げられます。
本作はその典型ですね。
シリアスに入るといきなり設定に関連したぽっと出のキャラが出てきて、お涙頂戴な展開。
これで面白いと感じるほうが無理でしょう。

こういうタイプのゲームをやるたびに「Sense off」の優秀さを実感しますね。
あちらもオールクリアで全貌が判明していくタイプですが、その過程のシナリオ自体もかなり面白いですからね。


他の要素も特筆する点はないので、全体的には普通の作品でしょうか。
あ、紬ちゃんは可愛かったかな。
あんまりお勧めはしませんね。
けど、いつもと違う作風に挑もうとした姿勢は好感が持てますし、
本作に限らず、今後もいろいろ挑戦してほしいと思います。