あおかな
「蒼の彼方のフォーリズム」
2014, 11, 28 / WIN / ノベルタイプADV / Sprite

少女たちが空を駆け、恋を知る物語。


【まえがき】
本作を楽しめるかどうかは、
本作特有のスポーツ「フライングサーカス」を楽しめるかどうか、に直結すると私は思います。
フライングサーカスは本作の世界観ないし雰囲気を作るといった点で非常に重要になっております。
それ故、フライングサーカスに興味を持ていない、
楽しめないというかたはプレイしないほうがいいと思われます。
まぁここらへんは体験版で自分の肌に合うかどうか確かめてみるのがいいのでしょうね。

さて、そんなフライングサーカスですが、個人的には大満足でした。
本作でフライングサーカスを魅せるためのルール等は特に問題なかったかのように感じました。
まぁ設定に超こだわるひとは注意したほうがいいかもしれませんね。
かなり練りこまれているか、といえばいいえとなるでしょう。
しかし、創作品のなかでオリジナリティを評価するような方はプレイして損はないような作品でだと思います。


【フライングサーカス】
フライングサーカスの説明については各々公式サイトでみてもらうとして、
作中ではやはりバトル風味な感じでしたね。
肉弾戦あり回避ありとさながら空中戦でしたねw
自分は正直ノベルゲームにおいて戦闘、バトル描写というのが苦手です。
なのになぜフライングサーカスは楽しめたのか。
これはやっぱりフライングサーカスは「スポーツ」だからなんだと思います。
んー、これは非常に言葉にしづらい感情です。
というか、ここはもう感性の問題なのではないのでしょうか。(投げやり)
合うか合わないか、それが全てだと思います。
と、いってもそれで終わらせてしまうともったいないので、
良かった点をちまちま上げていこうかなと。

個人的に良かったのは試合中の演出ですね。
フライングサーカスってめっちゃ飛び回るんですよ。そのうえスピードもかなりある。
本作はワイド画面で、そのような動きを効果的に表現できていたかと思われます。
一枚絵だけで示すのではなく、似非アニメーション風に線が差分で動いていったり、
カメラ風に一枚絵が横に動いてさらなる絵を表示させる。
また、CGの拡大をする。こういったようなことは他作品でも行われており当たり前のようなことです。
しかしフライングサーカスはワイド画面でこれらを用いることで臨場感を出すことが出来たのではないのかと思います。
大げさに言ってしまえばワイド画面だからこその作品、なのかもしれません。

また、試合中って黙々と地の文が続くのかなぁ、
とか思っていたのですがこれがちょっと違ったのですね。
フライングサーカスのプレイヤーには試合中にセコンドという存在がつきます。
このセコンドのおかげで試合中も会話文が減ることなくテンポ良く読めるんですよね。
くどい描写が少なく、会話が多めだからサクサク読めるといった点も個人的には好印象でした。
多分、ここがバトル物と大きな違いなのかな、なんて思いました。

また、試合中のBGMが個人的にかなりツボでした。
試合が展開されたり、攻防が逆転したりした時はBGMが変わるのですが、
それでテンションがあがっちゃいましたね。
本作でバトル中に挿入歌が流れる場面があるのですが、
挿入歌じゃなくてBGM流せよ。って思うくらいでしたw



【ストーリー】  
ストーリーは正直いって普通です。
ストーリーを重視するヒトからしてみれば物足りないでしょう。
大体の雰囲気はスポ根とでも言ったほうがいいのでしょうか。
さらに言えば友情努力勝利、ですかね。
でも、個人的にはツボでした。
正直本作なんてヒロインらがフライングサーカスを頑張り、恋するだけです。
でも、そのヒロインたちのフライングサーカスに対する頑張り、っていうのが非常に良かったです。

本当はあまり他作品の名をあげるのはいけないのですが…
他作品に例えるなら「ガンダムビルドファイターズ」に似た何かを感じたんですよね。
「ガンダムビルドファイターズ」を知らない方に超簡単に説明すると
ガンダムのプラモデルを作ります→ソレを操ってバトルします。以上
「ガンダムビルドファイターズ」の第6話にて、作中のキャラがこのように語っております

『別にやめてもかまわんのだよ。ガンプラ作りもガンプラバトルも趣味の領域。
機動戦士ガンダムの作中のように、戦争状態でもなければ、命のかけひきをする必要もない。
所詮は遊び、その通りだ。しかし、いや、だからこそ、人はガンプラにも、バトルにも夢中になれる。
好きだからこそ本気になれる。私は君の中に本気を見ている。』

スポーツに人生を懸けるひともいますが、口は悪いですがスポーツは所詮スポーツです。
プレイヤーの大半は人生を懸けてないでしょう。
本作は、所詮スポーツで心の底から楽しんでる。本気で勝とうとしてる。
飛ぶのが楽しいから、負けるのが怖い、様々な感情がありますが、
私はそういったヒロインたちの姿に心を打たれました。

また、本作は個人的に結構長かったのですが、あんまりダレることなく進行したかなと感じました。
まぁここは自分が楽しめたからってのが大きいですが

でも、ちょっと不満点も有ります。
それは個別ルートに入ってからの試合の尺が短いんですよ。
もうちょい見せてくれよなぁ、ってとこで終わってしまうので不完全燃焼感がちょっとありましたね。
また、真白ルートには良いシーンが多かったのですが、
それに対する前準備というか、もうちょい溜めが欲しかったですね。
溜めたらもっと映えるだろうなぁと感じたので非常に残念でした。

また、部活モノということで、なんだか昔の自分を思い出しながらプレイしましたね。
あー、そういえばこんなふうにも思ったことはあるかなぁとかなんだか懐かしい気分になってしまいました。

あおかな


【CG】 

きれいです。どれもキャラクターが可愛らしくて良かったです。
これは個人的な意見ですが、明日香ちゃんのCGが抜きん出て良かったです。
SD絵ですがこれが結構結構動いてて可愛らしく印象に残りました。
SD絵でフライングサーカスの簡単な説明や、練習のモーションを表現しており、
丁寧に作られているなーと感じましたね。


【総合】 

フライングサーカスという独特のスポーツ設定。さらにワイドを活かした演出。
BGMもCGも良かったです。作品としての完成度は高いです。
創作物にオリジナリティを求めるひとなら損はしないような作品でした。
まぁ、ぶっちゃけ本作はフライングサーカスではなくて既存のスポーツとかだったらそこらへんに転がってそうなスポーツ作品と変わりませんからね。
フライングサーカスの設定。
それが土台となった作品の雰囲気、世界観。
これにどれだけハマるかが本作を楽しめるか否かですね。
自分はどっぷりハマってしまいましたw
個人的にも楽しめたということもあり名作と言っても差し支えないような出来だと思っています。

でー、まぁ名作にしていたのですが落ち着いたら良作かな?とか思ってたのですが、
最近アニメがやり始めまして。
それ見てみたらゲームと大差無いじゃないですか。
試合の部分なんて、アニメのほうが迫力があるはずなのにゲームのほうが良かったわけで。
それを踏まえ得ると実はゲームってよかったんだなとか思い、名作ということにしておきます。

個人的な話をすると、私はここのメーカーが好きではありません。
一昔まえの私だったらメーカーが嫌い、というだけで本作を避けていたに違いないでしょう。
でも、ある時からはメーカーとか、そういうので作品を避けるのはやめよう、って思ったんですね。
そんなくだらない理由でプレイする作品の幅を狭める、なんてアホらしいじゃないですか。
それ以降はなんのこだわりもなくプレイするようになりました。
もしも、未だにくだらない理由にこだわっていたら本作をプレイすることはなかったんですよね。
本作をプレイし終わった後には本当、くだらない理由だなと実感しましたね。
本作をプレイ出来て、とても良かったです。


ランク:A(名作)