c1010402package

「DeepOne」

2018,10, 26 / Win / ノベル / Nameless




【あらすじ】

《魔導書(オールド・ワン)》を巡る、旧家達の宿業の争い
その宿命に翻弄された兄と妹は───その日、共に戦うことを決意する

双子がいた。
兄の名前は『尚哉(なおや)』
妹の名は『九花(このか)』

幼いころに両親と死別するという、辛い過去があったものの
ふたりは、ささやかながら幸せに満ちた日々を過ごしていた。

平穏であたたかな日常。
そんな毎日がこれからもずっと続くと、兄妹は思っていた───

だが、そんな淡い希望は、ある日、無惨にも砕け散ることとなる。

《魔導書(オールド・ワン)》

永き時の中で、人の史実の裏側で息づき、神秘によって隠匿されていた禁断の存在。
平穏な営みを送る人間とは、決して交わらないはずだった、それは。
突如として、兄妹の前に現れて、ふたりの穏やかな日常を否定した。

ふたりはどこにでもいるような、ごく普通の兄妹だと思っていた。
自分たちは何の変哲もない、ただの家族だと思っていた。

しかし、彼らは知ることになる。
” 自分たちは世界を揺るがす可能性を秘めた、ある魔導書の後継者である、と “

————幾重にも交錯する深き宿命の底で、今、数奇なる物語が産声を上げる————



【感想】
これ、アダルトゲームだったんですね。初めて情報を得た時は、全年齢だと思ってましたよ。
私はアダルトゲームのノベル系ADVにおいて、厨二要素が強いバトルモノは全くといっていいほどプレイしません。
だからといってバトルモノが嫌いというわけではありません。
アニメでは「スクライド」とか「ガンダムビルドファイターズ」とか好きですしね。
プレイしない最大の理由は、おそらくノベル系ADVでやる必要性が低いからでしょう。
私は戦闘描写のシナリオとかをありがたがったりしませんし、
そういうシーンなら動いてナンボでしょうという気持ちのほうが強いです。

そういうわけで、普段なら本作はスルー確実だったわけです。
バトルモノに加えてビジュアルノベル要素があったので、まぁこれは天地がひっくり返ってもやらないだろうと思っていました。
が、今年のアダルトゲームが個人的に不作でして。
それの原因の一つとして、自分のアンテナ範囲が低いからではないのかという思いがありました。

そこで、今回はアンテナを広げるとともに、
普段やらないタイプのエロゲをやることで、知見も広げようかなということでプレイしました。


本作のノベルタイプのADVとなっており、ストーリーの構造は基本的には、一本道となっています。
一本道といわれると、選択肢がないイメージが浮かぶと思いますが、
選択肢はけっこうあり、その選択によってバッドエンドに分岐するタイプです。
バッドエンド後はタイガー道場みたいなものが始まり、ヒントをくれたりするので、クリア自体は簡単です。

さて、本作の最大の魅力は演出やグラフィックにあるのでしょう。
私もそれ目当てでプレイしましたし。
演出は豪華と呼ぶのが適当なのかな。エフェクトも多彩だし、良く動くし、
場面の転換とか、カメラを動かしたかのような連続性を出していますし、迫力はありました。
私はバトルモノをあまりやらないので、ほかのバトルモノと比べて~という話はできません。
ただ、他の作品がこれらと同等というのはなかなか想像できないですね。
それに、読ませることを意識しているせいか、演出がプレイの進行を妨げていることもありませんし。
そういった点を考慮すると、演出は良いといえるのかな。まぁ立ち絵のシーンは普通なんですが。
ただ、衝撃度は少なかった。
それは本作の3年前に「fault milestone two 上」をプレイしていたからなんですよ。
あれはすごかったなぁ~私がノベルゲームで唯一進化を感じた作品かもしれません。
faultを知っていると、本作の演出がすげえと思うよりも、豪華という印象を抱くでしょう。
逆に、それ以外の人だと演出がすごいと感じるでしょうね。


ストーリーはざっくりいうと、主人公の分家がおれが本家になるぜーといって反逆するお話。
主人公たちは分家や本家のこともあまり知らずに、戦いに巻き込まれて~。みたいな感じですね。

個人的な意見を言うのであれば、あまりストーリーは楽しめませんでしたね。
ていうか、こういう巻き込まれ系のバトルモノって全然楽しめないんですよ。
主人公だけ何も理解できてないところみるとなんかあほくせってなりますし、
最終的に主人公を活躍させるために、修行パートとか挟まれるとほんとしょーもない。
本作のプロットは非常に王道ともいえる、巻き込まれ→修行→勝ち(過去とも決別)みたいな感じなんですよ。
王道自体は否定しないけれど、王道モノで非常に優れた作品というのはほかに存在します。
本作は、それらに比べると単純に劣っているなと感じました。

私は、ストーリーに対して適したストーリー構成をとってくれればよいと思っているので、
マルチエンディングじゃないとやだとか、一本道こそ至高という考えはありません。
けれども、ノベルゲームの利点の一つとして、マルチエンディングや複数のルートを用意できる点があります。
さらに、本作は続編があります。本作で一応話はひと段落しますが、ストーリーはまだまだ続きます。
本作は一本道でありかつ続編があるということで、ストーリー面ではアニメや漫画と同様の視点で語られてしまいます。
そしてストーリーは王道なのですから、それらのメディアの作品と比べられると、分が悪そうだと感じました。


加えて、設定面ですね。
設定面で他作品と差別化ができていれば、まぁこの作品もありだよなといえるかもしれません。
が、全体的に既視感を覚えます。まぁそれは自分が知っているだけでしょということもあり、
それ自体が非にはつながりません。

問題があるとすれば、それは宣伝や広報にあったのでしょう。
型月を目指すとかでしたっけ?型月を頭の片隅におきつつ本作をプレイするとどうしても比較をしてしまいます。
そしてそこからいろいろ連想されるんですよ。これはあの作品のあのネタだとか、ね。
プレイしている人たちだって、別に本作を叩きたいがために類似点を探しているんじゃないと思います。
ああいう宣伝の仕方をされると、どうしても型月を意識してしまうでしょう。
クリエイターたちはその点を考慮するべきだったんだろうなと思いましたね。
いっそのことfateの真逆のことやりまくって、逆fateとか呼ばれるように狙えばよかったのかもしれない。


こうしてみると、本作はノベルゲームの利点を潰しているんですよね。
最終的に、続編もあるよとか、エンディング後に言われたら、そら怒る人も出るよなと。
振り返ってみると炎上する要素はちまちまあったわけです。
…ていうか、分割(続編ありき)の販売のノベルゲーマーにとって最も嫌悪される事柄だと思います。
それを、エンディング後にムービーで流すって、正直センスないよ。
ifとしてのエピローグをつけて、発売数カ月後に続編とかやったほうが印象は良いと思いますけどね。
それとも、炎上を予想した演出だったのでしょうか?それだったら思惑通りになっているので、ある意味すごいですね。


こうしてみると、広報や宣伝のせいでまぁ、いろいろと損してるな~って感じの作品でしたね。
まぁ最近はユーザーもうるさいですからね。メーカーも大変だろうなと思います。
演出とか豪華で良いし、背景もゆうろさんということでグラフィック周りも良いです。
良い点はちまちまあるんですけどね。
作品外のところで悉く損をしている、ちょっとかわいそうな作品でしたね。