810NMlMq3BL._SY445_

「軍靴をはいた猫」

2018,9, 28 / Win / ノベル / Primula





【あらすじ】
ここは “獣の耳” と “尾” を持つ「猫族」が住む世界。
猫たちは「ニンゲン」と呼ばれる神様を「試練を与える代わりに猫たちの願いを叶えてくれる」存在として崇め奉っていた。

廃墟と自然が調和した豊かな国「和国」。
その姫であるタマは従兄コタロウとの結婚を間近に控え、「ニンゲン」に結婚を報告する「婚礼の儀」の日を迎えた。

儀式は厳粛に執り行われ、何事もなく終わるかと思われたその瞬間、まばゆい光とともに一人の青年が現れた。
“獣の耳” も “尾” も無いその姿はまさしく猫たちが信仰する「ニンゲン」そのものであった。

そして「ニンゲン」の降臨から数日。
遠い海の向こうにある「帝国」の来航によって、平穏な日々を過ごしていた和国は試練を迎える。
「ニンゲン」を巡り、和国と帝国はそれぞれの思惑を胸に動乱へと突き進んでいくことに。

一国の姫として、
一匹の猫として、
タマがとる選択は――――





【感想】
「大正×対称アリス」シリーズ(対アリ)で注目を浴びたPrimulaの二作目ですね。
対アリシリーズは4分割作品で、年間を通してきっちり完結させた商品形態でしたが、本作はフルプライスとなっています。

さて、本作はノベルタイプのADVとなります。
といっても(知っている人は何をいまさらって感じですが)、男性向けのノベルゲームとは異なり、選択肢が多いです。
また、本作では特殊な選択肢として、Sense of Self(SoS)システムが存在しています。
これは端的に説明すると、時間制限のある選択肢ですね。
といっても、画面真ん中に二択三択が現れるというより、
主人公をどう行動させるかに併せて、画面上下左右に選択肢が現れる感じですね。

私はノベルゲームにおいて、こういったプレイヤーに関与させるシステムを構築することに関しては肯定的です。
特に、今回の場合は急な行動を要する場面においてこのシステムが用いられています。
考えてもみてくださいよ、目の前に弓矢が飛んできたときにゆっくりどの方向に避けようかな~とか、考えますか?
本作は、その場その場の状況にあったゲームデザインを構築している、その制作姿勢は好感が持てます。
ただ、時間制限付きの選択肢っていうのは古くからありますしね。
加えて、システム自体が作中でそれほど用いられておらず、活かされているとも言えないので、結構普通な感じでしたね。

さて、本作は読ませる重視のノベルゲームということで、結構主観に依存する作品となります。
なので、思ったことをそのまま書いていこうかなと思います。

まずね~、主人公のタマ姫様がほんとーーーーーーーーーーーーーうに可愛かったw
いやー対アリの百合花もすごい良かったけど、こっちも良かったなぁ。
タマ姫様は和国の姫という立場の17歳でして、
真面目で素直な性格なんだけど、ちょっと抜けてるところが可愛くて、でも逆に姫という立場で頑張ろうとしてるところが魅力的でしたね。
あとは、「ニンゲン」オタクで、たまに我を失うところも面白かったw
まぁ確かに、対アリの主人公に比べるとインパクトは落ちるでしょう。
あっちは野郎どもを手玉に取る、すげえ強かさが魅力的でしたからね。
本作はいろいろある中でも自分自身が決意していく、年相応の芯の強さが魅力的でして。
その年相応っていうのが個人的にはきましたね。
男性向けのノベルゲームとかだと、女性キャラは記号的な性格をしていることが多いです。
そういうのあぁ~萌え~っていいながら消費するのにはいいかもだけれど、
やっぱりそれだと本心では満足しきれないことが多いです。
そんななか、こういった生き生きとした主人公はより一層魅力的に感じますね。



ストーリー関連についてですが、プロット自体は割と普通といったところか。
いや、十分に面白いとは思いますが、
本作ならではっていう要素が個人的には発見できませんでしたね。

と、書くと一見普通なのですが、本作はルートによって姫様の立場がころころ変わるわけでして。
場合によっては他国へ赴きますし、隠居したり、はたまた王として認められるために一生懸命頑張るのか・・
本作では、上記のようなあらゆる環境におけるタマ姫の生き様(といったら大げさだけど)が描かれています。
それによってタマ姫が多角的に掘り下げていると感じました。
なので、本作は和国が今後どうなるのかといった展開よりも、
いろんな環境におけるタマ姫の姿を楽しむ作品なんだと思います。
恋愛要素も特に強いというわけではないですしね。


総じて、前作同様にシナリオ・キャラクター・ストーリーが魅力的な作品でした。
個人的な印象ですが、前作よりプロットが弱まった分、キャラクターが強まったかなという感じでした。
また、本作では選択肢にゲーム性を加えるといった、新たな制作姿勢が見られ、好印象でした。
非常に優れた作品だとは思いますが、名作というには客観的に優れたといえる要素がちょっと足りないのかな。
まぁここ2年くらいは乙女ゲームでもフルプライスがそれほど出ていないですし、ノベルゲームという枠組みでは不作だったわけでして。
それらを踏まえると、相対的には名作といえるかもしれないですね。
個人的には、今年で1,2を争うくらいに楽しめた作品でした。