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「sense off ~a sacred story in the wind~」

2000,8, 18 / Win / ノベル / otherwise




【あらすじ】
静かに訪れる、地上で最後の幻視たち―
そこで直弥を待っていたのは、
「幼馴染みとの再会」という、人生の中でも割合ドラマティックなイベントだった――

季節は、春と初夏の端境期。
海からやって来た東風が、藤の花を揺らす頃。
桜の時期は終わったものの、初夏というにはまだ早い、そんな季節。

舞台は、地方都市。
「緑に囲まれた豊かな住環境」――
そんなキャッチフレーズのもと、
分譲住宅が売り出されているような、そんな街。

本当は、そのキャッチフレーズは、 
単に「田舎」ということを
隠蔽するためのものに過ぎなかったりもする。

その都市には、1つの施設がある。
大学に附属する研究機関だが、そこでは、学園生活が営まれている。
どこにでもあるような、それでいてどこかが違う、
擬似的な学園生活。

そんな舞台設定に訪れる、聖なる物語――



【ゲームデザイン】
ノベルタイプのADVです。
基本シナリオを読み進めていき、ところどころ出てくる選択肢によってヒロインごとのルートへと分岐していきます。
一部のキャラクターにはルートロックがあった気がします。



【ストーリー・シナリオ・キャラクター】
本作の特長はどこかといわれたら、私は全部というのですが、その中でも最も支持を得られそうなのがストーリーになるのでしょう。
作風は端的にいうと、
「ONE 〜輝く季節へ〜」に理系テイストを加えたような感じですね。
つまり、序盤はヒロインらとの軽くて楽しい掛け合いを楽しみつつ、
後半ではストーリーを楽しむといった流れになります。

本作のヒロインらは私的には魅力的なキャラクターが多く、序盤の掛け合いは楽しんでプレイすることができました。
特に幼馴染の成瀬とか、結構好みでしたね。
掛け合い関係はキャラクター自体の魅力に加え、
グラフィックも関係してくるのですが、そこは後述します。

後半は理系やSFファンタジーテイストの混じったストーリーが魅力的でした。
まぁ、今だと描写不足とか言われそうですが…
本作にはある設定があるのですが、
その要素をそれぞれヒロインごとにちりばめているんですよね。
そのため、プレイしていくにつれてああこれはこういうことか、
ある程度の理解ができるような構成になっています。
その要素をストーリー上でただ明かすだけでなく、
物語として昇華していた点は好印象でした。
まぁそれゆえ、各ルートから得られる情報やストーリーを覚えておかないと、
全体的に難解という作風に感じるかもしれませんね。
理系要素も強いのでそれも難解だと感じる要因になるのかな…

どのヒロインのストーリーも魅力的なのですが、
一番のお気に入りは椎子のストーリーですね。
「1704年、ベルリン━━」から唐突に始まった、
数学者の物語には一気に惹きこまれましたね。
いやー個人的にこういう理系ストーリーはもっと増えてほしいというか、
プレイしたいですね。
今現在、個人的に良いと思った理系エロゲは本作と
「ORATORIO~海より青い夏の彼方で~」くらいなんですよ。
(あと「猫撫ディストーション」もか?)
なにかお勧めがあったら教えていただけると幸いです。

また、シナリオが個人的にツボでした。
私は好んで森博嗣さんの小説とかを読むのですが、
それに似たシナリオを感じたんですよね。
肩が触れ合っているところを、肩の接点と表現したり、
冷たい人間の表現の仕方を分子の運動エネルギー(だったっけ?)に例えたりと、
理系シナリオがちらほらみられます。
それと同時に、詩的なシナリオも含まれてくるわけでして。
結構短文で魅せてくることが非常に多かったです。ここは好みの問題になりますが、
個人的にはかなり堪能できましたね。




【グラフィック】
アダルトゲームのウィンドウサイズがワイドの標準になってもう何年でしょうか。
一時期はとりあえずワイドにしとくかみたいなノリでやっていたせいか、
構図がひどいものとかありましたが、最近はマシになったのかなぁ。
さて、本作の原画家はゆうろさんです。
ゆうろさんというと、最近は背景の担当をしていることが多いですね。
大体、この背景良いなと思った作品は、ゆうろさんが関わっていたりしますね。

そんなゆうろさんが原画を担当した本作、もちろんCGの質も最高でした。
特に構図ですね。キャラクターと背景を一体化させたCGは、非常に素晴らしかったです。
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また、これはあまり明言されてないのですが、
キャラクターの立ち絵も非常に良かったんですよね。
なんていうのかな~、Win以降のノベルゲームでは、
立ち絵の種類が豊富となり、立ち絵が様々な感情を表現する役割を担うようになりました。
本作はそれに加えて、行間を読ませてくるような表情としぐさをキャラクターがしてるんですよね。
そこが個人的には非常に魅力に感じました。
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【BGM】
主題歌は安定のI'veということで最高でしたね。
特にエンディングが非常に優れていたと思います。
今でも聞くくらいお気に入りの一曲です。
BGMは折戸伸治さんが参加しているということで、言わずもがなですね。
「ピアノフォルテ」や「遍歴」、「ミスティック」あたりがお気に入りでしたね。



【総合】
ノベルゲームは音と絵と文章やらの総合芸術だと、聞くことがたまにあります。
読ませる重視のノベルゲームは、プレイヤーが直接ゲームに関与することがないため、
その点においてゲーム性はないです。
そのため、そのほかの要素、すなわちストーリーシナリオキャラクター・BGM・CG・システムなどが作品の判断要素となるため、
そのような考え方もありでしょう。
ただ、そのすべてが優れており、かつ相乗効果で良くなっている作品っていうのは、
実際のところあまりないです。
本作は、そのすべて、読ませる重視のノベルゲームを構成する要素、が優れている、
貴重な作品だと断言できます。
本作が発売されてから18年経っていますが、すべてが優れていたノベルゲームを挙げろって言われてもあと2作品くらいしか思いつかないですね。
それゆえ、長い年月が経っても、
私の中では最高のノベルゲームのひとつとして残り続けていくのでしょうね。

昔はプレミアがついていましたが、最近になってメガストアの付録になり、
DL版が発売されたおかげで、価格も落ち着きましたね。

このブログに来ている人は恐らく既にプレイしていると思いますが、
もしプレイしていない人がいれば、強くおすすめしたい作品ですね。