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「抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?」

2018,7, 27 / Win / ノベル / Qruppo

「―――この俺が、ドスケベ条例をぶっ潰す! 」





【ストーリー】
青藍島……ここは通称『ドスケベ条例』によって変態的交尾が許可されている楽園(パラダイス)。
そこに転校してきた主人公『橘淳之介』は、誇り高き童貞であると同時に、骨の髄まで処女厨であった。
だがドスケベ条例は彼の通うことになった水乃月学園も例外ではなく、
「セックスしないことは校則違反! そして同時に条例違反! 即逮捕・即尺八・即プレイ!」
規律を絶対遵守させる生徒会と風紀委員会、通称「SS」の魔の手から、淳之介は逃れられるのか……!?
仲間と共に童貞を死守せよ! 淳之介の戦いが今はじまる!



【はじめに】
通称、「ぬきたし」…発売前に結構話題になっていた、
新規メーカーの処女作ですね。
処女作で体験版が話題になった作品というと、個人的に苦い思い出があるので、
購入は後回しにしようかと思っていました。
けれども、この作品で裏切られる可能性は低そうですし、
なにより新規メーカーは応援したいですかね。
そういう思いからプレイしたのですが、結論から言うと大当たりでしたね。




【ストーリー関連】
本作の最大の特長はストーリーになるのでしょう。
ストーリー構成ですが、ある箇所の選択肢でヒロインの個別シナリオへ進みます。
すべてクリアするとTRUEが解放される、読ませる重視のシンプルな構成です。

さて、本作をプレイした感想としては、
あぁ~やっとエロゲにもこういう作品が来たか~。ですね。
古来にもエロゲではバカで変態な作品というものはありましたが、
こういう真面目路線(?)な作品はあまりなかったような気がします。
他方で、ラノベだと「下ネタという概念が存在しない退屈な世界」とかが有名ですね。
こういう作品こそエロゲが先行してほしいよな~と個人的には思っているので、
これを機にこういった作品というか、いろんな作品が増えてほしいですね。


あらすじは簡単にいうと、『ドスケベ条例』を潰すために主人公らが奮闘するお話ですね。
巷でストーリーの評判が良いので、
ストーリーに期待すると少し肩透かしをくらうかもしれません。
というのも、本作のストーリー、というかプロット自体はシンプルかつ王道なんですよね。
本作のプロットは敵組織に対抗し、戦うってだけですから。
設定があまり見かけないもののため、
プロットに吹っ飛んだ内容を期待すると、ちょっと普通だなって感じがすると思います。
じゃあなんで巷でも評判が良いのかって、
それはストーリーやシナリオが良いからなんですよね。
ストーリー…つまりどのような手段をもって『ドスケベ条例』を潰すために奮闘するのか、
また、その過程の描写が秀逸だったのです。

まずはメインとなりうるバトルや逃亡シーンですね。
本作では敵組織から逃げたり、時には攻めたりするのですが、
その防衛・攻撃手段の大半がジョークグッズだったりしますw
某Eggが閃光弾だったり、
ダッチワイフが変わり身だったりでユニークに富んでいましたね。
そのグッズを主人公らが真面目に制作していたり、それで真面目に戦ってる主人公らには好感が持てました。

あと、私はノベルゲームにおいてバトル描写が苦手なのですが、
本作は普通に楽しむことができました。
それはなんでかっていうと、
本作のバトルや逃亡っていうのは個人戦ではなく集団戦だったからだと思います。
個人戦とかだとどうしても地の分や主人公らの心理描写の割合が増えるかと思いますが、
集団戦だとチームワークが重要になるので、キャラ同士の掛け合いが多いんですよね。
そこが個人的に良かったです。
ここらへんは体験版をプレイすれば良さの片鱗を味わえるかと思います。

また、個別シナリオについてですが、美岬が吹っ飛びすぎてた…w
恐らく、多数の人が本作に求めていたバカでエロな要素っていうのは、
このルートに詰め込まれていますね。
あまり語りすぎるとネタバレしちゃうので省略しますが、
このルート考えた人、頭のねじちょっと緩んでますねw
久々に個別シナリオで満足しましたね。
他のシナリオも女性キャラ同士の友情アリと普通に面白かったですね。
ルートによっては普通に感動しますし、
きちんと舞台の設定を活かしたストーリーでしたし、
別にこの個別シナリオって他の萌えゲとかでもいいよね、
みたいなことも思うことはありませんでしたし、満足度は高かったのかなと。
どのルートにも~というより、本作全体に言えるのですが、
ストーリー自体が非常にしっかりしています。
こういうオリジナリティ溢れる設定の作品って、
じゃあこういう事態が発生しうるよね?といった、
プレイした際にユーザーが持つ疑問点なども、
きちんとストーリー上に組み込まれているんですよね。
細かく粗探しをしたら多少抜けはあると思いますが、
重要度の高いところっていうのは結構カバーできているのかなと。

また、主人公は『ドスケベ条例』を潰すために奮闘しているのですが、
その過程で様々な人と理念や思想の対立します。
正義の反対はまた別の正義ってやつですね。
事実『ドスケベ条例』によって助かっている人々もいるわけでして、
主人公がそのことに気付いたり、大義名分を掲げつつも私怨なのではと思ったりする問答も良かったですね。
おいおい主人公のアイデンティティの確立に付き合うとかたりいぜ~って印象があるかと思いますが、
主人公自体、プレイ開始からヘタレではなく芯を持っており、
かつ能動的に動くキャラクターなのでそういった嫌味を感じにくいのかなと。

これは主人公以外にも言えますね。
ライターがキャラクターを都合よく動かしたりしないしので、敵味方全員魅力を感じやすいキャラクターとなっています。
また、基本的に無駄な描写がないのでストーリーに集中できる点も良かったです。

ここまでのレビューだと、これくらいならラノベでおけってなりそうですが、
その期待を裏切ってくれるのが本作でした。
まずエロシーンですが、ちょっと個人的な性癖になりますが、主人公側が逃げる立場なので、
女性主導が多く、満足でした。
なんだろうね、エロゲやってて女性主導ってあんまないですよね。
S系とかだとそら女性主導になりますが、
いやいや違うんだよ~普通のエロで女性主導が欲しいんだよ~と思っていたので、
その点を満たしてくれた本作は良かったです。

また、普通のエロ以外もあったのが良かったですね。
これは理解されないかもしれませんが、私はエロゲでエロシーン以外にもエロな要素があってもいいよなと常々思っています。
少年誌のスケベ描写よりちょっとランクのあがった、
エロス的なシーンをグラフィックありで堪能したいのです。
本作をプレイしていて、どうせ日和ってるだろうから、
そういうのないんだろうな~と思ったら、ありました。
あったんですよ。ヒロインがプリクラで撮影する時に、
恥ずかしながら胸出したりだとかそういうシーンがちらほらあったんですよ。
いやーこの点は大満足でしたね。

こんな感じで、本作は私がこの点はどうなってんだろうとか、
こういう要素あったらな~といった点を、ことごとくカバーしているんですよね。
もうプレイしていて降参しましたねwエロゲやってて負けだ~って感情を味わいましたね。


あとシナリオもようここまで下ネタが出せるなと。
ネタの多さもですが、ところどころキレがあって思わず笑っちゃいましたよ。
お気に入りは「催淫ペン」です。シンプルで美しい。
パロネタもちらほらありますが、こういった雰囲気の作品なので、
特に嫌味を感じることはありませんでした。

ストーリー関連は、プロットは王道、
ストーリーやシナリオは軽く吹っ飛んでるという感じで、
全体としてのバランスは良かったと思います。
吹っ飛んだプロットを求めていた人も、ストーリーやシナリオ方面で楽しめるという、
多数の人が楽しめる案配になっているのかな。


ここまで褒めてきましたが、微妙な点を挙げるとすれば、
個別シナリオの大まかな流れが同じであることと、
TRUEシナリオが微妙というところでしょうか。
ぶっちゃけ、TRUEは中盤くらいまでこれまでやってきたことの総集編で、
単純に途中までプレイしていてつまらなかったです。
ここが違ったりもっといい仕上がりになっていたでしょうね。

あとはいろんなエロシーンがあっても良かったなのかなと。
例えば個別シナリオでバッドエンディングを用意して、ドスケベ条例に洗脳されてしまったヒロインのエロシーンとかあっても良かった気がしますね。
全体的によくできているがゆえに、ちょっと吹っ飛んだ要素が薄いという点がウィークポイントでしょうか。






【演出・グラフィック】
さて、本作が面白いのはストーリー関連だけではありません。
まず演出ですが、素材の数は多いと思います。
それ以上に良かった点は、素材の使うポイントですね。
ノベルゲームをやっていて、ああこういうところに立ち絵とか素材あればなぁ~と思うことってありませんか?
本作は素材の数が多いことに加えて、素材を使うポイントが良いんですよね。
ユーザーがここに素材あればなぁと感じる箇所にことごとく素材が用いられているため、
非常に丁寧に制作しているなという印象を受けました。
特に空気嫁関連は面白かったなぁ、吹っ飛んでいく空気嫁とかほんとひゅんひゅん飛んでいきますからねw
また、主人公が戦闘・逃亡をする際にメガネをかけるのですが、
その際に画面デザインが変わるところも、丁寧で良かったですね。
こういう細かいところもしっかりしているから、ユーザーを作品に没入させることができ、良い評判を得ているのだと思います。

CG枚数が69枚とフルプライスにしては少ないのが残念でしたね。
けれども、プレイしていてグラフィックの足りなさを実感することはなかったので、
そういう意味でも素材も扱い方が上手かったのかなと思います。





【総合】
プロットが案外普通だったり、グラフィックの枚数がフルプライスにしては少ないというマイナス点があります。
それゆえ、名作というには一歩足りないような気がしますが、それ以上に良い点の多い作品だったので、名作でもいいのかな~。
主観では満足で、お勧めの作品です。
久々に想像以上に良いと思える新作に出会うことができました。(ランスは別)

正直、2018年上半期はランスを除くと、個人的に大不作でして。
ここ2年くらい微妙~な感じが続いており、今年の上半期が絶望的だったので、
もう自分が時代に追いつけていないのかな、平成終わりまではエロゲを頑張ろうと思っていたけれど、引退かなと考えていました。

そういう思いの中、新規メーカーがこういった気合の入った作品を出してくれて本当にうれしかったですね。
まだまだエロゲ業界もワンチャンあるのではと思わせてくれました。
振り返ってみると、ここ数年の新作で印象的な作品は新規メーカーのものが多いです。
ふと振り返ってみると、それらの作品には短所もあり、すべて名作とは言えませんが、
それ以上に長所を感じることが多かったと感じました。
マンネリなメーカーよりかははるかにいいなと思うわけでして。
新規メーカーはできるだけ応援するように心がけていましたが、
本作でより一層その気持ちが強まりましたね。