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「VA-11 Hall-A Cyberpunk Bartender Action」

2016,6, 21 / Win, MacOS他 / ノベル / Sukeban Games


【作品紹介】
荒廃した世界にあるバー『VA-11 HALL-A(ヴァルハラ)』のバーテンダーとなって様々な人々と交流していくビジュアルノベル。

主人公が住むディストピアの住民達は、権力の支配から逃れるためにヴァルハラにやってくる。
バーテンダーであるあなたはこの闇の世界の住民達にカクテルを提供して、様々な情報を入手していくことになる。

それらの情報から紡ぎだされるディストピアの日常とは…。

・サイバーパンクディストピア、『グリッチシティ』での日常を知る
・よくある台詞選択でのストーリー分岐とは違い、
 提供するドリンクで変化するという独特のストーリーテリング
・PC98時代の古き良きアドベンチャーゲームへのリスペクトを、
 現代のテクノロジーで表現
・客の好みを熟知し、彼らの一日を変え、
 一生を変えるカクテルを提供しましょう!

【はじめに】
VA-11 HALL-A(ヴァルハラ)はプレイヤーがバーテンダーとなり、
様々なお客さんにカクテルを提供し、交流をするゲームです。
お客さんと会話することが主体となるので、
ストーリーらしいスト―リーはありません。
作中内の雰囲気を体験する、今風で言うとナラティブな作品に該当するのかな。

ナラティブな作品ということで、やはり重要になってくるのは、
プレイヤーをどれだけ作中に没頭させることができるか、
すなわち、世界観とその雰囲気作りになるでしょう。

ヴァルハラはそれを達成できたのか、その点を中心に述べていきたいと思います。




【ゲームデザイン】
本作ではお客様にカクテルを提供する際に、
実際にカクテルを作るパートが存在しています。
ここで提供するカクテルによって一部会話の内容等が変わるので、
ノベルゲームにおける選択肢の役割を担っています。
イメージ1064

このゲームデザインは非常に良かったと思います。
ただ単に何のカクテルを提供するかを選択肢として表示し、
それを選ぶだけだととても味気ないですからね。
プレイヤーがバーテンダーとなり、お客様にカクテルを提供し交流をする…
本作のコンセプトを表現した良いゲームデザインだと思います。


いまいちな点を挙げるとすれば、分岐が分かりにくい点でしょうか。
また、カクテル作りのシステムが単調なため、
何回もカクテルを提供していると、段々作業感が強くなってきます。


カクテル作りのパートはシステム自体は単調のため、
この点に期待するとがっかりするかもしれません。
どちらかというと、作品の雰囲気を作り上げるという要素が強いです。



【グラフィック、画面デザイン】
>・PC98時代の古き良きアドベンチャーゲームへのリスペクトを、
  現代のテクノロジーで表現
まー本作で一番気になったのはここなんですよね。
正直これが表現されていたのかというと、疑問を抱かざるを得ません。



まずグラフィックから行きましょう。
PC-98とかいてあるけど、どっちかっつったら88ぽいよなと。
まぁそれはどうでもいいんですけど、
98とか88のドットのグラフィックより全然良いと思えなかった…
昔の人とかって、8色や16色という制限された中で、
めちゃくちゃ頑張ってグラフィックしていたわけでして。
それを今、98や88実機でプレイして見ると、ほんとスゲーなと思います。
でも本作のは、ドットに変換したかのような薄っぺらさを感じてしまいます。

また、本作はCGがほとんどないんですよね。
一応最後の最後でポンポン出てくるのですが、
プレイ時間の多数を占めるお客との交流のシーンではほとんど使われません。
立ち絵が変わるくらいです。
ここはプレイしていて寂しさを感じました。
最初は気にならなかったのだけれど、
プレイするにつれてカクテル作りが作業となり、
ほとんど変わらない画面でテキストを読み進めていくのは、
私にとって非常に苦痛でした。

立ち絵で客を表現するのもいいけれど、
バーが舞台で主人公はずっとバーテンダーをやっているのだから、
シーンというのは固定されるはず。
そのシーンのCGを複数パターン作って、
差分でお客様の入れ替わりを表現するという手段でもよかったように思います。


あとはお客様が酒の飲んでるっていう表現が、
グラフィックで現れないのも寂しかったですね。
せっかくカクテルを作ったのだから、
おいしそうに飲んでるお客様を見たかったですね。


一応立ち絵は目パチとか口パチがあるので、
演出面ではリスペクトしているといえるでしょう。



次に画面デザインについてですが、右側が完全に死んでいます。
本作はカクテルを作るシーンよりも客との交流、
会話のシーンのほうが圧倒的に割合を占めます。
客との交流の際に、カクテルシェーカーは必要なのでしょうか?
原料は必要なのでしょうか?
このカクテル作りのシステムが画面の右側を支配しているせいで、
肝心なお客との交流は画面左側でのみ、という非常に狭苦しい印象を与えてきます。
そのため、客との会話は基本サシ、最大3人となっています。
イメージ1065


今のノベルゲームの大半はワイド型の画面を取っています。
それは本作も同様です。バーのカウンター席って横に長いでしょう?
バーテンダーとして、あらゆるお客との交流をする際に、
ワイド画面で客を並べるというのは、実際の環境と一致します。
そのほうが雰囲気も出るし、多種多様なお客との交流、
組み合わせが可能になり、
バー特有の一期一会感を強調できたりするでしょう。

じゃあどうすればよかったのか、
という点は現代のテクノロジーで解決できます。
例えばマルチウィンドウ。
MS-DOS(PC-98)の頃はマルチウィンドウはありませんでしたが、
Windowsだと可能ですよね。
カクテルを作るパート用のコマンドは、
マルチウィンドウで並列に表示して自由に動かせるようにすれば、
画面デザインに柔軟性を持たせることができます。
現代テクノロジーで表現という点をクリアできますし。

(補則ですが、MS-DOSの頃にもマルチウィンドウを搭載したゲームはあります。
しかし、画面の中に可動式の画面があるという感じで、並列に並べたものはない…と思うんですけど、ちょっと自信ないです。間違ってたらすいません)

別にマルチウィンドウ以外にも、
普通にカクテルを作るパートの時だけ表示する、とかでも良いんですけどね。




【システム】
セーブポイントが固定で、好きなタイミングでセーブできないとか、
クリエイターはポイズンブレスのファンか?
今のノベルゲーに必須の要素が圧倒的に欠けています。
なんか前にも書いたけど、
こういう雰囲気が需要なゲームってシステムが相当重要になると思うんですよね。
ちょっとでもシステムに不満を持つと、この「ゲーム」はダメだという認識を持ってしまい、
冷めてしまう恐れがありますからね。






【総合】
ゲームデザインは良いし、BGMは良いし、客の大半は大人で個性的で面白い連中です。
優れた作品であることは、間違いはないでしょう。
だから、雰囲気にハマればべた褒めするのは十分頷けるんですよ。

けれど、それだけなんですよね。
このゲームにはそれ以上もそれ以下もないのです。
98時代リスペクトということで、人によっては、過去のADVの再生に過ぎないと感じるでしょう。

この記事を書くために、いろんな記事を見たけど、
大半が似たようなことを書いた、褒める記事ばっかりでした。
そういう点からも、本作は雰囲気にハマれるか否かという、
一方からでしか捉えることのできない、
薄いゲームなんだろうなと思ってしまいました。

まぁ逆に雰囲気が良いゲームをレビューすると、
みな一様にこういう風に表現するんだな、という知見は得られましたけどね。
自分も雰囲気が良いゲームとか、主観的に面白かった作品とかで、
そういう風に書いた記事、いくつかありますもんね。
でも冷めた人からするとそれは納得しきれないし、させることはできなんでしょうね。
今後はちょっと注意していきたいです。


うーんこれどうなんだろうね、私みたいな、
今88や98のADVを実機でプレイして楽しんでいて
(あるいは昔リアルタイムでやっていた、)
なおかつ新作のノベルゲーム追っかけてるような人には、お勧めできないですね。
過去の名作をやったほうが、得られるものは大きいです。

じゃあ逆にどのような人にお勧めできるのか。
例えば昔98とかでADVやってて、
今はもうプレイしていない人とかは懐古的な気分で楽しめるでしょう。
また、Windows時代のあらゆるノベルゲーをプレイしてるけど、
新作はあまり追っかけてない人は楽しめると思います。
また、本作の雰囲気が良さそうだと直感した人ですね。



相当否定的な記事になってしまったけれど、個人的にはこういう作品は大好きです。
作品のコンセプトに沿って、
システムやデザインを構築したものを体験するというのは、
ゲームならではですからね。
こういう要素は今の18禁ノベルゲームではほぼ見かけることはないですし、
こういうゲームデザインするチームがエロゲ業界とコンビ組んだら、すげえいい作品ができるんだろうな~。


ここはバー『VA-11 HALL-A(ヴァルハラ)』、酒と雰囲気に酔いしれる世界。
酔えなかったものは、去るのみですね。そんな感じでした。