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「雪子の国」

2017,8, 11 / Win / ノベル / STUDIO・HOMMAGE 



【作品紹介】
キリンの国(2014ふりーむゲーム大賞大賞受賞)、みすずの国(2014ふりーむゲーム大賞ノベル部門金賞受賞)の続編、雪子の国。



舞台は風光明媚な地方城下町。
そこでは不可解な連続怪奇事件がおこっていた。

夜な夜な屋根にのぼる、少女の霊。
神社に灯る、狐火。
人を取り込む、峠の魔。
五十年前の神隠し。

全ての謎は、一つのメッセージへと帰結していく。

「俺たちで謎を解き明かそうぜ!」

東京の少年ハルタと天狗の少女雪子がおくる、青春ハートフルラブコメディ+地方都市ミステリー!

やがてくる冬は、最後の冬になる。
少年と少女でいられる最後の時を、鮮烈に駆ける、今を生きる物語。



※前作「キリンの国」「みすずの国」をプレイしていなくても遊べますが、前作をプレイしているとより一層「天狗の国」の世界観を楽しんでいただけます。
※「キリンの国」「みすずの国」はふりーむの下記ページよりダウンロードして無料で遊んでいただけます。
https://www.freem.ne.jp/brand/3707



【国シリーズとは】
「もしも日本の領土に、天狗の国があったなら」

国シリーズは、そんな〝if〟の世界を描いた物語。

文化、地理、歴史、法律――世界観に力をいれ、貴方に天狗の国へ冒険にでたような臨場感を味わっていただきます。


ユニークで彩りにあふれる世界は、きっと貴方のなかに眠る「旅人」を呼び起こします。

国シリーズは二つの時代で描かれる物語。

国シリーズはある出来事を境にした「以前の時代」と「以後の時代」の二つによって交互に描かれます。 

以前の時代。

「みすずの国」「キリンの国」でも描かれた〝以前〟の時代。
二十世紀末を時代背景、「天狗の国」と呼ばれる自治領区を舞台にして、異国情緒あふれる冒険の物語が展開されます。

以後の時代。

「雪子の国」で描かれていく〝以後〟の時代。
「みすずの国」「キリンの国」から十五年後、二十一世紀の現代を時代背景とします。
地方都市を舞台とした学園生活を主軸に、「以前の時代」に登場した人物たちと関わりある次世代の少年少女たちの物語が綴られていきます。

この二つの時代は、天狗の国で起きるある出来事によってへだたれています。
国シリーズは、この出来事を二つの時代、起こる前と、起こった後から迫っていく構成をとります。
(公式HPより)




【感想】
本作はSTUDIO・HOMMAGEが制作する『国』シリーズのひとつであり、そのシリーズの中では三作目となります。
前2作の『みすずの国』、『キリンの国』はフリーゲームとして配信されております。
それぞれの作品が一つのストーリーとして完結しているので、
『雪子の国』をやるにあたりそれらをプレイしなくても支障はありませんが、個人的には推奨しておきます。
というのも、本作の根底にあるテーマが人間と天狗の対立や共存といったものを描いているからです。

それゆえ、本作の特徴でもある天狗の国についての理解等を深めておく必要があります。
まぁ『みすずの国』は1時間くらいで終わるので、この国シリーズが気に入るかどうかの判断になると思うので、
本作が気になる方はまずは『みすずの国』からやってみてはいかがでしょうか。
できれば『キリンの国』もぜひやってほしいですね~。
ここでは割愛させていただきますが、天狗の国を舞台とした、男同士の友情を描く作品で非常にストーリーがいいので。


前置きが長くなりましたが、『雪子の国』。端的にいえばストーリーが面白かったです。
本作を一言で表すのであればジュブナイルものになるのかな~。
偽物まみれで生きてきた男が本物を求めて頑張ったり、過去にしがみついている子が未来へと歩いていく、のらりくらりと生きてきた男…
そういったキャラクターたちが、謎の怪奇現象を追っていくに従い、少しずつ変わっていく…

そういった思春期に生きる少年少女のお話が好きな人にとって、本作は非常に楽しめるでしょうね。

私もなんだかんだこういうのは楽しめちゃうタイプなので、終始楽しんでプレイすることができました。
最近は涙もろいので、場面によっては涙腺にきたりしましたね。

けどイマイチな点が一つ。それは天狗の国自体がそれほど本作に影響を及ぼしていないという点です。
自分としては全2作の天狗と人間が交わるところだったり、天狗同士の対立等が面白かったということがあったので、その点だけはちょっと残念でした。
まぁ本作ではもう天狗に国は終わり、新たな時代が始まりかけている~といった情勢になっているため、
天狗の国自体にそれほど出番がないのでしょうがないのですけれど。

影響を及ぼしてないとはいうけれど、一応本作では水面下で天狗の国に関するいろいろな政策が行われています。
そのさりげない描写のえげつなさは描写としてよかったですし、政策が今後どうストーリーに作用するのか、その点はワクワクしましたね。
国シリーズはまだ続くらしいので、ここら辺は次作への下地作りという感じでしょうか。
また、やはり人間と天狗は別モノ__差別等もありますので、その辺の描写はシリアスでしたね。
そういった点においては本作は天狗の設定が作用しています。

また、シナリオも良かったですね。会話主体でテンポがよく、くせのない文体でスラスラと読めます。
キャラクターも記号化されたようなものではなく、きちんと立っている。それゆえ、何気ない一言が心にきたりするんですよね。
あとヒロインの雪子ちゃんがかわいいw

ということでストーリーに関する部分において満足度は高かったです。
こういったオリジナリティ溢れる設定を持ちつつ、ストーリーで満足させてくる作品って、最近出会っていませんでしたからね。
それゆえうれしさもひとおしでした。


次にグラフィックになるのですが、本作は
立ち絵用意人数 30人
立ち絵差分 2000枚
一枚絵 40枚
となっています。
立ち絵の差分が2000枚から察する通り、本作は結構立ち絵のみで描写を示すということがよくあります。
それが地の分を減らし、会話主体のテンポのよいシナリオを生み出すのに一役買っているという印象でした。
立ち絵の差分は多いからってマイナスになることはありませんし、この点はよかったです。

CGのほうが質が良い悪いかはさておき、気になった点がふたつありまして。
ひとつ目は用いられる場面ですね、ストーリー等で強調したいシーンではきちんと使ってくるという点は好印象でした。
また、どういう場面であるかっていうのも一目で伝わってきます。
本作では場面の全貌を把握するかのような遠距離からの描写もそこそこあり、クリエイターが何を表現したいのかというのが伝わってくるような感じでした。

BGMはフリーのものを使っていますが、クオリティ的には問題ないのかなと。
むしろ、オリジナル楽曲を使用している他の作品よりも印象に残るものが多かったですね。
ここなんですよね。本作はグラフィックやBGMの使い方が非常にうまいんですよね。
私は本作のクリエイターであるKAZUKIさんのことはあまり詳しくないのですが、どうやら小説でさまざまな賞に投稿していたらしいですね。
結果はあまり芳しくないようでしたが、方向転換としてメディアをノベルゲームへシフトしていったのでしょう。

小説は文字がメインであるため、もし仮にノベルゲームへとシフトしても、作者として優先する第一要素が文字になる気がします。
でも本作は違った。クリエイターがノベルゲームとはなんなのかという考えをきちんと持っているような気がするんですよね。
それは世間一般ではBGMと絵とストーリー等が融合された総合芸術とかいうのでしょう。
まぁ何が言いたいかというと、本作は小説→ノベルゲームへとシフトする際に、きちんと作品をノベルゲームで表現しようという気概が伝わってくるんですよ。
それゆえ、グラフィックやBGMの使い方__どの場面を強調したいのか、印象付けたいのか__がうまく、BGMやシーンが記憶に鮮明に残り、物語に感動を与えているんですよね。

巷でよく言われるシナリオ重視のライターやクリエイター、その人たちがどれだけこれを達成できているのか。
お前らは俺のテキストやプロットでもありがたく読んでろとでも言わんばかりの人もいる中、こういったノベルゲームの演出方面にてデザインができるクリエイターっていうのは今にしては貴重ですね。

まぁ本作はBGMもグラフィックもシナリオも全部一人でやってるような感じなので、自分の考え通りにデザインできているという点もありますが。



システム周りは良くないです。
自分はゲームエンジン関係は無知なのだけれど、これNScripterですよね。
ほんとに必要最低限なので、最近の商業用のシステムに慣れている人だときついかもしれないですね。
私はシステム周りをそれほど重要視していない、というより、20年以上の前のゲームを普通にやるので悪いほうには寛容だったりします。
(けど商業の最新作でシステム周りが悪いと一周回って文句言いますがw一番新しいのになにやってんだって)

また、声もないです。
声の有無については個人の好みもあるので良い悪いの判断は個人に依存しますが、個人的にはなくても問題ないって感じですね。

そういうこともあって本作はなんだか15年以上前くらいの作品と言われても違和感がないくらい古いんですよね。
加えて値段が2000円以上するわけですからね。周りの同人ゲームが頑張っている中、これはちょっときついかもしれないですね。
言葉は悪いかもしれないのですが、本作はそういった観点から同人ゲームが好きな人は好きになる作品なのだと思います。
逆に商業ゲームを好むような人にはあまりお勧めできないですね。土台となるシステムやボイスなど、商業では当たり前の部分が抜けているわけですから。

自分は特に古い感じでも問題ない、というよりも同人ゲームではシステム周りの快適さボイス云々以前に、
作者のこだわりとか個性の発揮された作品を望むので。
けど値段がちょっと高いかなという感じでした。
まぁ『みすずの国』、『キリンの国』がフリーなことを考えると高くてもいいのかなという感じですかね…


そういうわけで本作(というより本シリーズ)はストーリーを中心として、BGMやグラフィック面におけるデザインも良く、個人的に好印象な作品でした。
うん、これは評価云々の前に自分は好きだなと思える作品でした。次の作品も楽しみですね。