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「Making*Lovers」
2017,11, 24 / Win / ノベル / SMEE

交際してから始まる恋心




【あらすじ】
「恋愛は付き合うまでの過程がすべてだ……!!」
彼女いない暦=年齢 の俺は、どんなに馬鹿にされても譲れない、そんな恋愛への強いこだわりがあった。
運命的な出会いを果たし、何度も偶然 顔を合わせて連絡先を交換。
そして休日は一緒に遊びに行って、さらに仲良くなって本格的なデートを……
そんな、俺の言う “恋愛” とは その交際に至るまでの “過程”、そこにこそロマンがなくてはならない。
ナンパやお見合いなんてもってのほか。 人からの紹介も、他人のお膳立てがある時点で絶対NG!
そう思い続けて今まで生きてきた。
しかし ある女子の一言により、俺はその考えを急遽改めることになる。



【はじめに】
書きたいことがぼんやりと決まっている場合ってのはなんだか書き始めをどうするか困ってしまうんですよね。
そういう場合は関係のないことから書き始めると良いということを聞いたので、今回はそんな感じで記事を書いています。
というか、書こうとしている対象が本作のHPのコンセプトを見れば概ね把握できるし特に書く必要もないのかなとか思ったり。

さて、なんだかんだ毎作楽しみにしているSMEEの新作ですが、率直な感想を言えば今回も普通に面白かったかなーって感じになります。

SMEEは恋愛をテーマとしたノベルゲーム、俗に言う萌えゲーを制作しているわけですが、ほかのメーカーとは異なる特徴があるのはご存知かと思います。

1つはキャラクター同士の掛け合い、シナリオ関連ですね。
SMEEの作品は主人公をはじめとして面白い発言をするキャラクターが多いです。
そのため、萌えゲーにとって重要な日常のシーンを楽しく進めることができます。
私は萌えゲーをプレイすることがちまちまありますが、
モノによっては日常パートに面白みを感じることができずにすぐに飽きてしまうことがあります。
そういった作品がある中終始楽しみながら進めることができるSMEEの作品は希少であると感じます。

2つめはゲームデザインですね。
SMEEはただ読むだけのノベルゲームではなく、ADV的な要素を取り込んでいます。
これにより作品にゲームとしての付加価値を生み出し、他メーカーとの差別化に成功しています。


【ゲーム構成】
さて、私にとって上記のような魅力を持つSMEEですが、本作に限って言うのであればこれらの要素については本作はちょっと微妙だったのかなと。
まずは掛け合いの点ですが、これは作品の構成が影響を与えていたのではないかなと。
本作はプロローグの選択肢によってどのヒロインと付き合うかが決定され、俗にいう個別ルートへと展開しています。
なお、今回の主人公は第二新卒であり、かつヒロインは妹・気象予報士・大学時代の同期などなど多岐にわたっています。
そのためよくある萌えゲーの、同じ学園(舞台)であるが故のヒロイン同士などのつながり…というものがありません。
そして、それにより各ヒロインごとに主人公の住処や仕事も変わるので、設定や舞台の種類は豊富になります。

これにより何が掛け合い等に影響を与えるのかというと、私はヒロインを多角的に捉えることが困難になったのではないかと感じました。
例えばですが、主人公とヒロインA(以下A) or ヒロインB(以下B)が一緒にいる場合と、主人公とAとBがいる場合のヒロインたちの性格ってのは多少ではありますが異なったりするんじゃないかなって。
極端な例を出すのであればAはツッコミ系でBはボケ系の性格をしているとします。
主人公と二人っきりのときはその性格が全面に押し出されたりしますが、多人数でいる場合にはその性格が互いに干渉しあうと思われます。
Aに影響されて普段ツッコミをしないヒロインBが突っ込んだり、逆もあるとは思いますが、そういった普段見れない側面ってのが
ヒロイン同士の触れ合いで生じたりするんじゃないのかなって。

まぁ本作では各職場ごとになかなか濃ゆいサブキャラがちらほらいて、そのキャラを絡めた掛け合いの楽しさっていうのはあるのだけれど、
そのサブキャラは言葉は悪いのですがヒロインの新たな側面を魅せるような副次的な作用をもたらさないのですよね。
本作では共通シナリオもないということもあり、余計にヒロイン同士の絡みはないです。というか0です。


ヒロインの属性だけを消費したいのであれば絵と属性で判断して作品をやればいいのです。
でもSMEEの作品ってそうだったかな?というのを認識しましたね。

さらにいうと本作の初期分岐は選択肢によるもので、SMEEの特徴であるADV的な要素で分岐がするというゲームデザインをしておらず、
ゲーム性はほぼないです。
極端に言えば、最近よく見るヒロインの名前を選択肢で選ぶだけのシステムでも十分といえます。
そして共通シナリオがなく、ヒロイン同士の掛け合いもない…そうなるとヒロインごとに分割して個別販売しても問題ないと言えるでしょう。
これ別にフルプライスじゃなくてもいいよね?といわれても仕方ない気がします。
近年のトレンドとして一作品をヒロイン事に分割する形式やルートごとの販売というのが確立してきています。
これが何を表すのか、予想ではありますが、ユーザーが自分の好みの部分だけをやりたいという声が強くなってきているからじゃないでしょうか。

本作は「交際してから始まる恋心」をコンセプトとしているため、個別ルートに力をいれるのは当然です。
しかし、そうであるがために序盤が簡易化されすぎて、作品がヒロイン事の個別販売のほうが適してしまう…
フルプライスとしての価値が薄れていると感じました。と思われても仕方ないでしょうね。

まぁフルプライスとしての価値があるアダルトゲームなんて今はほとんどないと自分は思っていますし、
自分はノベルゲームではヒロイン全員プレイして、あんまり興味なかったヒロインが可愛いやんけ~ってなるときが一番楽しいと思っているので、
主観的にはフルプライスの価値という点ではマイナスにはなりませんが、掛け合いの面白さがちょっと下がったのはいただけなかったですね。


【ヒロイン】
いやー一番興味なったましろが一番よかったですね。
ヒロインと主人公がボケとツッコミの両方をやるので常に新鮮な感じで楽しめましたね。
ましろの職場のサブキャラも魅力的でしたし。

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【ゲームデザイン】
個別ルートではデートのコースを選べます。
ゲームセンター・展望台・カラオケ…ディナーはおしゃれなところから居酒屋まで。
それだけです。コースの選択によりエンディングが分岐するとかは特にないと思います。

本作は恋愛の過程を重視しています。
その場合力を入れるのはキャラクターの心理描写やストーリーといったテキスト媒体のもの、
或いは恋愛ADVとしてゲーム要素を強くして、好感度パラメータなどによって分岐するマルチエンディング形式風のようなもの…になると思います。
極端に言えば恋愛のプロセスをストーリーとして楽しむか、ゲームとして楽しむかというわけですね。

本作の場合そのどちらでも、強いて言うのであれば前者になるのかな~このゲームデザインで後者とか言えるはずないので消去法で前者ですね。
そうなる場合、ゲームデザインが微妙な点はマイナスになりにくいのかな~
スタッフ的にはこゲームデザインは演出であって、プレイヤーに能動的にデート先を選択させることで、ヒロインとの距離感を感じてほしいという思いがあるそうです。
が、回数がさほど多くないうえにそこまで作用していない気が…恋人同士だったら前デートした場所の話題とかで出るでしょう。
そういう過去の行動、今回でいうデートの内容、がメインとなるシナリオに反映されてないため、演出としては微妙に感じました。



【総合】
SMEEの魅力である掛け合いとゲームデザインの2つの要素、これらが微妙になった本作。
この2つの魅力が半減したうえ、新たな試みも微妙という結果になりました。
前作と今作で迷走している感が漂い始めてきた気がしますが、いつも似たようなのを作ってるメーカーに比べたら、
毎回新たな表現を試みるSMEEは本当に応援したいと思っています。

前作・今作を制作した経験から、魅力的な作品が出ることを楽しみにしていたいですね。