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「桜花裁き」

2017, 2, 24 / Win / ADV / IRODORI

言葉は刃、斬り裁け。




【商品概要】
悪を裁くは名奉行! 正義の心ここにあり!!
新ブランド・IRODORI のデビュー作は、時代劇を思わせる痛快奉行活劇!
行政と司法(裁判)を司り、町の平和を担っていた 町奉行 を舞台として、
賑やかな日常、事件の調査、お裁き、といった具合に 3つのパートで物語を構成している。
日々発生する事件を追いながら、個性的なキャラクターたちとの賑賑しい毎日を楽しもう。
調査パートでは手ずから様々な場所を巡り、情報や物証を集めることになる。
奉行パートでは原告や被告の証言を聴きつつ、疑わしい言には選択のメスを入れ、調査で手に入れた情報や物証を活かしていく。
喧々諤々なやり取りの中で嘘を見抜いて言葉で切り裂き、真実を暴いて沙汰を下そう!



【ゲームシステム】
本作のジャンルはADVで、裁判モノになるのかな。
まぁ、一応舞台が江戸なので正確には奉行モノなりますが、本質的な部分は同じでしょう。
ストーリーは話構成となっており、
ゲームのパートは
1. ノベルパート
2. 調査パート
3. 奉公パート
から構成されています。
イメージとしてはエロゲ版逆転裁判ですね。
自分で説明するよりかはHP等を見たほうが分かりやすいのでここでは簡単な説明で済ませてしまいます。
ノベルパートは話のイントロのようなもので、ただ読み進めていくだけです。
ノベルパートで事件が発生した後に、調査パートで事件を調査していきます。
ここは基本的にコマンド選択型のADVで場所移動やキャラクターへの聞き込みをします。
また、現場の調査もしますが、このときはポイント&クリック(P&C)式のADVとなります。
調査が十分に完了した後は奉行パートへ進みます。
選択肢によりどういうふうに進めていくのかを決定したり、証言や証拠品を選択して相手を追い詰めていき、犯人・及び事件の真相を追求していきます。


Win以降、より正確に言うと2000年以降とかになるのでしょうか、
のアダルトゲームはノベルゲームばかりとなってしまいました。
その傾向は2017年、現在になっても変わってないんじゃないかなと思います。

そうした非常に偏った商業アダルトゲーム市場にこういった純粋なADVが出てくるのって、何年ぶりなんでしょうね?
近年で頑張ってたADVとなると、古色迷宮輪舞曲とか?
まぁ探せば色々あると思うけど、あまり思い浮かばない辺り、久しぶりなのでしょうね。

まぁノベルゲームばかりで、しかも年々システムが簡素になってきているのは、それが市場のニーズというものなのでしょうが、
個人的にはこういったゲームもやりたいよなと思うときがありまして。

本作はある程度その気持ちを叶えてくれたのかな。

さて、まず奉行モノに対して読ませるだけのゲームにはせず、調査や奉行といった部分をゲームとして表現していたのは個人的には好印象でした。
ゲームなんだから能動的に動く部分はそれ相応のシステムにしてほしいよなという気持ちもありますし、実際プレイしてもまぁある程度満足感はあったのかなと。
けど全体的にやらされている感ってのが強かったのかなと。
この感じを言葉では表現しにくいのですけれども、クリエイターが作った道をきれいに沿わされているというか、どっちに曲がればいいのか分かる迷路とでもいうのか…。
つまり、行動や選択に能動性が足りなかったのかなと。

調査パートなどでは、元々行く場所があまり多くない上、話を進めていけばどこへいけば良いのかもすぐわかります。
また、現場の調査も調べる必要があるものは比較的目立つので、すぐ分かります。
簡単すぎるというと語弊かもしれませんが、単純に物足りなかったかなと。
別に鬼難易度にしろと言うわけではありません。
例えば、奉行までに時間が限られているので行ける回数に制限を掛けるとか、証拠品を見せて新たな証言などを得るなど、もうちょっと工夫できる点はあったのかなと思いました。

それは奉行パートでも同様です。
奉行パートは間違えた場合のペナルティがありません。
一応、点数による評価があり、完璧にクリアすればボーナスで雑誌等に掲載されたイラストなどが見れたりします。

しかし、ゲーム進行に影響を及ぼすペナルティはなく、言葉を悪くすれば総当りで考える必要なく進めたりすることもできます。
まぁ、そんなコトやるひとはいないだろうけれど、プレイヤーが分からずに詰まってしまった場合など、最悪ゴリ押しで進めることができます。
奉行って、実際に自分はやったことはないけれど、普通は緊張感だとか、間違えられない雰囲気が漂っているんじゃないかなと思います。
なので、そういった雰囲気にするためにペナルティ等はあったほうが良かった様に思われました。
あーでも、今だと難易度が高いと叩かれそうですしね…そうなると難易度調整機能とかがあればよかったのかなって感じがしますね。


また、細かいところですが、間違ってしまった場合などのバッドエンドがあればよかったのかなと思いました。
本作だとミスったらそのままメニュー画面に戻っておしまいで味気なかったので、少しでも良いので何かしらのテキストは欲しかったですね。

なんか見返してみるとマイナス方面の話ばっかりなのでプラスのお話も。
奉行をする際に関わる人が多いのは特徴になるのかなと。
普通裁判だと容疑者がひとりだけで進行しますが、本作では複数人で進行し、その場で口論に発展したりするのはわちゃわちゃしてて単純に面白かったかなと。



【ストーリー・キャラクター】
まぁガチガチのゲームシステムのものをやりたければ家庭用など一般のモノをやればええやん。
大事なのはストーリー・キャラクターですよという声もあるでしょう。
ストーリーは話構成となっており、メインストーリーが完結した後に個別ヒロインのルートが存在する形となります。
そして、毎話終わるごとに次回予告がありました。
これは結構良かったというか、一件落着のあとにドーンと来るもんだから次も面白そうだな~って気合も入りますし、雰囲気が出てて個人的には好印象でした。

メインストーリー自体は、どうなんだろうね、個人的には結構面白かったです。
こういった推理系のモノをやると序盤の伏線が~とか気になりますが、そういった構成の妙によるものではなく、キャラクター性による面白さが出ていたのかなと。
伏線がどうとか、奉行パートとかギチギチのロジカルで詰められたストーリーを期待すると物足りないかもしれませんね。
実際にプレイしてみると奉行パートの演出やキャラクター性が優れているので、そういった細かいところは気にならなく、勢い良く楽しむ事ができると思います。

キャラクターに関しては、一人一人が良いこともありましたが、個ではなく集団で優れていたかな。
本作の奉行所、中町奉行所という集団がいい味をしていましたね。
それぞれ個性的なキャラクターでしたし、ヒロイン同士の繋がりや、男キャラ同士の会話など、キャラ同士の繋がりは多くあったので純粋にプレイしていて楽しかったです。
まぁ自分がこういった集まりが好きっていうのもありますが。

個別ヒロインのルートは正直申し上げて微妙です。
一人を除いてほぼ似たような展開、シチュエーションで金太郎飴でした。
エロシーンも普通で、後述しますがCGがあまり良くなかったです。そのため、個人的には微妙だと思いましたし、優れているとは言えませんでした。



【グラフィック】
CG枚数200枚以上!内HCG45枚!
とボリュームを大々的に宣伝していた印象が強い本作でしたが、グラフィックに関する満足度は普通だったかなと。
確かに、枚数はかなりありました。SD絵含めて225枚。
枚数だけ見れば他のフルプライスの倍以上です。
しかし、肝心の一枚一枚の質はどうでしょうか。
プレイした人なら分かるかと思いますが、ヒロインの顔が安定してないんですよね…
いい表情のもあればちょっとこれはな~ってのもあるわけです。
また、キャラクターが大きく描かれ、場合によっては背景が白だったりするものもあります。
それに加え、モノクロのCGも多いので全部カラーのCGと期待するとちょっとがっかりするかもわかりませんね。
モノクロのCGは筆ペンで描かれており作品とマッチしており、
使い方が非常の良く、動的なシーンや事件の回想等で用いられており、全体的に雰囲気に合った使いかたをしているなという印象を受けました。
ちょっと文句もあるけれども大体他のゲームに比べたら定量的に満足したグラフィック、だけれども、なんだかあまり記憶に残ってないんですよ。
ということは、使い方に問題があったのでしょうね。
思い返すとインパクトのあるシーンのCGって大体モノクロだとか背景が白だったりするんですよね。
そのせいであまり記憶に残らなかったのかなと。



【画面デザイン・演出・BGM】
本作は作中の雰囲気に合わせたのか、テキストが縦書きとなっております。
それ自体は特に問題はないのですが、テキストの表示の仕方に問題があるのかなと。
主なパートではテキストがこう表示されています。
イメージ097

プレイしてみるとわかりますが、非常に見にくいです。
場所自体も一番右と非常に偏った位置にあるうえ、立ち絵とテキストを同時に認識することが非常に困難な画面デザインとなっています。
これね、やってて目が非常に疲れた。画面デザインは最悪に近いと行っても過言ではないでしょう。
普通に吹き出し形式とかにすればよかったと思うんですけどね、奉行パートとか、吹き出しに近い感じになってたのに、どうしてこうなった…


演出は結構良かったですね。
ノベルパート等での立ち絵に関しては普通でしたが、奉行パートに入る時やパート自体にカットイン等が良く用いられており、作品を盛り上げる要因となっていました。
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BGMも同様に良かったです。
そういや、予約特典でBGMをFM音源化できるんですよね。
これ、評判はどんなかんじなんでしょうね。
キャリアのある方たちには刺さりそうですけど…今時、よくこんなん特典にしたよなぁ~その心意気に感服ですw



【総合】
素直に面白かったです。
フルプライス相当のボリュームと満足度でした。満足度だけで言えば今年の上位は間違いなしでしょう。
しかし、それと評価は異なります。
全体的には問題のない作品でしたが、細かい所で特典を稼ぎにくい作品だったかなと。
悪くいうと逆転裁判など既存の法定モノと大きく差別化する要因がないんですよね。
細かいゲーム性を始めとして、18禁たる要素や個別シナリオなど、そういった部分が普通すぎましたね。
総合では良作といったところでしょうか。 次回作も楽しみです。
読むだけのエロゲには飽きたよ~って方はプレイしてみてはいかがでしょうか。




総合評価:B (良作)