126001087
「バーニングポイント」

1989, 2, 23 / PC-88 / コマンド選択型ADV / エニックス


 「親愛なるMr.R・M様。僕は──────────
                     今日から探偵です。」




【あらすじ・作品の特徴】
オフィスのドアに「スティール探偵事務所」と書かれた表札をつけてから三日が過った。
依頼に訪れる客は無く、机の上の電話も鳴らない。ぼくの名前はマイク・スティール。
ライセンスを取ったばかりの探偵だ。
探偵という職業は、例えば退職した警官がなるケースが多いことを考えると、ぼくのような若すぎる探偵というのは異色だろう。
これといった信条もなく、そのかわりに挫折もない。
とは言っても経験不足であることは否めない。
謎を秘めた美女の依頼人には興味はあるが、
銃弾の嵐をくぐり抜けるような自身と体力はない。
ぼくにあるのは懐疑心、真実を知りたいと思ったとき、ぼくの懐疑心は人一倍旺盛になる。
そんなぼくのところへ初めての依頼人が訪れた。上流家庭出身のフィストバーグ夫妻だ。
この品の良い老夫婦がぼくに依頼したのは、
消えてしまった孫娘のヘレンを捜してほしいという依頼だった。
しかし、普通の失踪人捜しとはちょっと違う。
ヘレンがいなくなった状況にかなりの謎があるのだ。
彼女は夫と共にあるホテルに宿泊した。
しかし、そのホテルが真夜中に火災を起こし、
夫は助かったのだがヘレンだけが火災から逃げ遅れてしまったのだ。
鎮火後、ホテルの焼跡からはヘレンの死体は発見されず、
生存者のなかにも彼女の姿はなかった。
文字どおり彼女は消えてしまったのだ。
この不可解で非現実的な事件を調査していくぼくは、
やがて巨大な陰謀の渦に巻き込まれ、ぼく自身の命をも狙われる羽目になる。
さまざまな思惑が交錯する人間模様のなか、
この事件の発火点となった隠蔽された真実を解き明かそうとするためには、
ぼくはわずかばかりの勇気を最大限に奮い立たせなければならなかった。



「パーセプション」とは、感知する、認知するという意味です。
このゲームは従来のAVGとは異なり、グラフィック、SE(効果音)もゲームの情報となります。
そう…見て、聞いて、テキストの情報を得ながら推理していくという、
あなたの洞察力が試される新しいタイプのミステリーゲームです。
さあPTでハードボイルドの私立探偵を体験して下さい。

●「ふきだし」方式によりテンポのよい会話のラリーが、
即!あなたをバーニングの世界へひきずり込む!
●「通常コマンド」の概念をとりはらい、会話中のせりふの中に自然に登場するあなたの意志を決定させゲームを進めますので、ドラマの流れをたんのうできます。
●思考のマザーベースは探偵事務所。状況を分析、
推理し、次の行動を決定できる捜査方針モードというシステムをつけました。
●リアルなフルグラフィック(アニメ処理)
●ふんだんに使ったSE37種類!●付属の新聞もゲームのヒント!




【ゲームシステム】
あらすじから分かる通り、本作は探偵モノとなっております。
コマンド選択型のADVで、パーセプションタイプミステリーゲームと題されていましたね。

まずはじめに自分のプレイした感想を簡単に言わせてもらうと、まぁ~面白かったですね。
上記に書かれているパーセプションの演出によって、まるで自分が探偵になったような気分でプレイできましたし、
(わざわざ高いお金を出して買った←88本体よりも高かった)サウンドボード2から鳴るBGMも良かったですね。
舞台もアメリカ西海岸で雰囲気も良かったですし、
キャラクター同士の掛け合いも面白く、とにかくプレイしていて楽しい作品でした。
インターネットの感想を見てもこれがマイ・ベストADVと仰る方もいますし、
人気は高いのかな。

さて、本作は探偵モノのコマンド選択型のADVということで様々な人に会いながら情報を集め、事件の解決に挑んでいきます。
ここで、一般的なコマンド選択型のADVだと、
「移動する」→「事務所」 とか「会話する」→「学生A」とかのように
「動詞」→「名詞」と簡素なコマンド表現になっています。
しかし、本作では 「◯◯さんに話しかけよう」→「◯◯について心当たりは?」
「何か持ち物をみせよう」→「事件現場で見つけた◯◯」
など、口語的とでもいうんですかね…
単語ではなく会話中に使われるようなテキストを用いてコマンドを表現しています。
これにより、事務的な淡々とした雰囲気ではなく、
会話のラリーをしているんだという印象をあたえることに成功しているように思えました。
(上記の「●「通常コマンド」の概念をとりはらい~」のとこでも似たようなことが書いてあります。クリエイター陣の思惑は成功したのでしょう)

加えて、本作はテキストの表示形式が画面下の固定ウィンドウではなく、
漫画のような吹き出し形式となっています。
これにより会話を主体としたテンポの良いシナリオ。雰囲気を作り出しています。
同時に、後述する「パーセプション」によるキャラの表情の変化なども、
テキストと同時に捉えることが出来るようになっています。

さらに、本作は「パーセプション」という演出を取り入れています。
上記にも書いてありますが、「パーセプション」とは、感知する、認知するという意味です。
本作ではキャラに聞き込みをしている時、キャラが嘘をついていそうなときには、
そのキャラクターが目線を逸らしたりします。
また、室内を調査するとき重要なものが落ちていたりするときには光るエフェクトを入れたり、
録音されている重要な証拠を検証するときにはSE音などに気をつけて検証をしたりします。

口語的なコマンド表現、テンポの良いシナリオ・吹き出し形式、
加えてパーセプションによるキャラクターの機微な変化。
本作はこれらが全て相互的にシナジーを生み出しており、
非常にテンポの良い心地よさと、自分がその場にいるような臨場感を生み出しています。
そのトータル的なゲームデザインは非常に優れているように感じました。

また、その場にいるような臨場感(作中へ惹き込む力)に加え、
SE音や画面上のエフェクトを表現する「パーセプション」。
これによりプレイヤーは視覚や聴覚といった語感を用いて謎に挑んでいくわけです。
臨場感はさらに向上しています。
そして、パッケージに付属している新聞紙!
これを読むことでゲームが進行する場面があります。
これら全ての要素がプレイヤーを『バーニング・ポイント』の世界へ惹き込むのです。


本作はホント、様々な要素のかみ合わせが素晴らしいと思いますよ。
ほんと、称賛に値すると思います。
あとは難易度もそんなに高くなく、
自分の事務所に戻るとちょっとしたヒントなども見れるので詰むこともないです。
これもテンポの良さを出している要因のひとつでしょうね。

捜査の部分についてもなかなか良かったのかなと。
自分で集めた証拠を自分で筆跡鑑定したり声紋照合したりと、
自分で操作を進めているぞっていう感覚をもろに味わえましたね。
また、基本的に探偵モノって様々な人にあって情報を集めて、
現場に行ったり…と、とにかく足を使って移動をすることが多いです。
本作では電話などを用いて情報を集めたりしているので、
そこら辺は当時結構新鮮だったりしたのかもしれませんね。
そうして集めた情報を元に、誰について聞き込みをするか、
誰を尋問するか…こういった部分も選択できました。
こういった捜査の部分もプレイヤーを本作の世界へ惹き込むのに強く作用していましたね。


【ストーリー】
ストーリーもなかなかいい感じでした。
行方不明となっている女性を追うごとに次々と謎が出てきて、
大きな陰謀の可能性を突き止めてしまう…
それにより主人公も危機に陥って…と、謎が明らかになるごとにさらなる謎が生じ、飽きがこない展開でした。
また、事件のバックグラウンドも、それぞれ人の思惑があり、魅力的でしたね。

後は主人公が新米探偵というのもなかなか良かったですね。
ハードボイルドの小説を書くロス・マクドナルドという作者に憧れていて、
ハードボイルドに憧れている若々しさが妙に可愛らしくてね。
シナリオもその若々しさが出ていたりしてね。
また、主人公の周りのキャラクターもアメリカンな軽いノリのものが多く、
会話が純粋に面白かったですね。

舞台はアメリカ西海岸ということで結構珍しい感じなのかな?雰囲気も良かったですね~。
ただまぁ、アメリカ西海岸というと海沿いのストリートを思い浮かべてしまいまして、
その場面があまりなかったのがちょっと残念だったかな。

ここまで良いことしか書いてませんが、微妙だったところも。
登場人物が言うほど魅力的では無いんですよね。
深いセリフを言う印象に残るキャラクターやヒロインといった強烈なインパクトを持った
キャラクターがいないせいかもしれませんね。
どのキャラも比較的大人しく、そのように感じてしまいました。

【BGM・他】
BGMは非常に豪華でしたね。
アメリカ西海岸という舞台に合ったBGMで、雰囲気は最高でした。
オープニングのBGMが個人的には非常にお気に入りでした。
 
ちょっとここらへんはあまり詳しくないのですが、
PC-88(PC-8801 SR以降か?)にはFM音源が標準でついてきます。
それでも普通に遊べるのですが、
そのFM音源を豪華にするサウンドボード2という拡張音源があります。
具体的に言うと3和音出力(モノラル)→ 6和音出力(ステレオ)+リズム音源+ADPCM
という風に拡張できます。
これによりBGMがより重厚な感じになります。
これは全ての作品に適応できるわけではなく、

ゲームのほうがサウンドボード2に対応していないといけません。
本作は対応していまして、それだけで本作はBGMにも力をいれているぞというのが伝わってきますね。

システムでも文字速度を変えられたりとちょっとだけ便利だったと記憶しています。



【総合】
非常に完成度がたかく、それと同時にゲームデザインが優れていた作品でした。
単純に作品として優れていますし、それ以上にお気に入りの作品となりました。
パッケージには新聞や依頼契約書なども入っており、豪華でしたしね。
PC-88じゃないとプレイできないのがもったいないですね、
ADVが好きな方には是非プレイしてほしい作品だと思います。




お気に入り度:S