c710902package
「七つのふしぎの終わるとき」
2011, 12,22  / WIN / ノベルタイプADV / etude

戻る? 立ち止まる? それとも進む?



【商品概要】
七不思議の謎が少女たちの“時”を動かす――
etudeの第4弾タイトルは、“時” をテーマとしたミステリアスな学園青春群像劇。
時間を操作する力を秘めた時計を手にした主人公は、
その力に関連した学園七不思議の謎を暴くことになるのだが……
不思議な少女を助けたり、同じ目的を持ったヒロインたちと力を合わせたり、
時を遡ったり、対立する学生会と時計を奪い合ったり。
植田リョウ氏によるヒロインたちの魅力もさることながら、
ポップで奥深いシナリオにも心惹かれることになりそうだ。
もちろん、ひと癖あるヒロインたちとの恋愛模様も描かれるぞ♪
(getchu.comより引用)




【ストーリー】
あらすじは簡単で、
主人公がヒロインたちと一緒に学園に存在する七不思議の謎を追求していく、というものになります。
なんだかミステリーな雰囲気を感じますが、
どちらかというとローファンタジーな感じでしょうか。
また、本作は七不思議という設定を利用したポップな萌えゲーというよりも、ちょっとシリアスがある、ヒューマンドラマ風のストーリー重視の作品となるのでしょう。
テーマは「人間の成長」ということで、七不思議を利用した重厚のストーリーを期待していると痛い目を見るかもしれませんね。
七不思議要素自体もある程度盛り上がりますが、どちらかというとソレが舞台のキャラクターを描いたもの、となる感じです。
ブランド側としてはストーリーとキャラクターの両立を目指したらしいのですが、そのせいでなんだか中途半端な作品になってしまったかなと。


さて、そんな本作ですが、主人公たちの目的が最初から提示されているため、序盤からのテンポは非常に良いです。
最近のゲームでは序盤はどうでもいいような日常から始まり、
話の本筋が見えてこないということも珍しくないです。
しかし、本作では序盤から主人公が明確な目的を持ち行動し、
ヒロインたちと出会い、同様の目的を持った生徒会と対立をしたりします。
それにより作中における人間関係の構造がわかりやすく、
作品としての全貌が把握しやすかったです。
そのため、序盤からテンポが良く、
プレイヤーを作品に集中させることに成功していたと思います。

また、謎、というか七不思議の持ち主が明らかになった後でも新たな謎が生じてくるため、
次が気になる展開をしていきました。
ここらへんは素直にプレイしていて非常に面白かったですね。
無駄な描写もないですしストーリーも重視する本作ではここまでは本当に良かったです。
あとは、七ふしぎに関する調査の仕方とかですかね。
昔の探偵モノとかだったら聞き込みとかで進めていく感じですが、本作ではインターネット、
生徒のツイッターなどから情報を集めたりしていて今風だなあという印象を受けました。 
イメージ034
次に本作のストーリーの構造になるのですが
共通パート→ヒロインごとの個別シナリオ→TRUE
となっております。
TRUEをプレイするには全ヒロインを攻略する必要があります。

ここで問題となるのが、
ストーリーを重視した本作においてこの構成は良かったのか、という点です。
先程書いた序盤は上記で言う共通パートになります。
共通は良かったのですが、その後の個別シナリオがね…
言ってしまえばヒロインごとのシナリオはいらなかったように思えます。
まぁヒロインによっては、特にふみルートは生徒会と主人公陣営との七不思議の奪い合いの結末のひとつとしては十分にアリなストーリーだったと思います。
序盤から提示されている目的が一貫していますからね。
他のヒロインに関しては特に必要性を感じませんでした。

まぁ確かに、
個別シナリオそれぞれに作中の謎を散りばめて必要性を持たせているようには思いますが、
それがヒロインごとのストーリーとして活かされているかと言われたらイエスとは言えません。
実際、七不思議関連の描写は少なく、
付き合う描写やエロシーンが多く占めているように感じましたし。
まぁでも、テーマが「人間の成長」らしいので
七不思議に関する描写が少ない事自体は批判の対象になりにくいのでしょう。
それよりも個別シナリオにおいて人間、
すなわちヒロインや主人公の成長というものを感じられにくいのが問題なのかな。
全体的に浅いですし、七不思議によるヒロインたちの苦悩など、
そういった部分があまりなく、共感を得られにくいシナリオだったため、
そのように感じたのかなと。

また、TRUEにロックがかかっているため、
構造上興味の無いヒロインもプレイすることになってしまいます。
私自身はノベルゲームにおいて、全ヒロインをプレイし、
全部を含めて評価をしたりするので特に問題ではないのですが、
好きなのだけやりたい人だっているでしょう。
そういう人などにとっては興味のないヒロインもやらざる負えない構造となっているため、
まぁあまり褒められたものではないのかなと。


先程も述べたとおり、ブランド側はストーリーとキャラクター、両方を重要視しています。
そういう観点からは、この構造はありなのかもしれません。
キャラクターの魅力を最大限に出すためには、
個別シナリオでヒロインに焦点を当てるという手法は良いのでしょう。
(まぁ私自身は個別シナリオでなくてもキャラの魅力って出せるとは思っていますが、
一般的にはこの手法が良いのでしょう)
しかしこの手法ではストーリーを活かしにくいんですよね、
つまりこの構造ではストーリーとキャラを両立しにくいのです。


そのため、本作ではよく言われる脱落式、
一本のメインとなるストーリー(本筋)から分岐でヒロインの個別シナリオに行ける形式だったら良かったのかなと。
そうすれば上記の問題点は解決できますし、
ストーリーも良い作品として仕上げることが出来たと思います。

TRUEはおもったよりボリュームがなかったなというのが主観的意見でしょうか。
主人公に関する部分をもっと膨らませればより満足できたのでしょうが、
ほんとに終わりの終わりだから膨らませることもしにくいでしょうし、
無駄な描写が増えてもアレだからこれでよかったのかもしれませんね。



あと全体的に冬っぽいなーってのを感じました。
季節が冬のゲームって冬を感じにくいと思いませんか?
春なら桜、夏は青空・セミ、秋は紅葉、冬は雪…とそれぞれ季節感を視覚・聴覚に訴えるものはありますが、雪って舞台に依存するため、安易に用いづらいのかなと。
あと背景とかしょぼくなりそうですし。
本作は主人公が「今日は寒いから早く風呂に入ろう」とか、
冬なら誰しもが思うことをわざわざ思ってくれるため、
主人公に共感して冬らしさを感じたのかなと。
あとは元旦イベントでヒロインの着物姿とか見れるし、
そういった部分からも感じるのでしょうね。



【システム周りのデザイン】
おそらく本作で最も優れている部分。
中身自体は一般的な作品と変わらないのですが、
本作はそのデザイン部分が非常に優れていました。
コンフィグ周りにおいてはテキストやサウンドといったオプションに切り替えるごとに
背景の時計部分も同時に動きます。
本作において時計というメディアは非常に重要な役割を持っており、
ソレを活かした画面のデザインとなっており、雰囲気が良かったです。
イメージ035

ALBUM、CG鑑賞の部分も優れていましたね。
アルバム画面ではヒロインがピンぼけした感じで並んでいるのですが、
ヒロインにマウスを当てるとヒロインに焦点があたり、
そのままクリックをするとシャッターを切る演出が入り、そのままCGを閲覧できます。
作中でも主人公がよく写真を取っており、
こちらもストーリーにおいて重要な役割を担っておりました。
そういった作品をよく理解したデザインには驚かされました。
イメージ036

で、もっと驚くのがBGM鑑賞。
BGMを選ぶと曲と同時に用いられるCGとも流れます。
イメージでいうとスライドショーみたいな感じですね。
これでプレイした後もBGMを聞きながらCGを流し見でき、感傷に浸ることができます。
主題歌等に関してはムービーが流れます。
よくシーンとかのオプションだとOP,EDムービーが見れる場合がありますが、
こういった部分で見れるのはちょっとびっくりですね。
リピートもできますし、便利でした。
イメージ038


コンフィグやBGM・CG鑑賞といった部分はゲームの本筋である部分を支える、
ゲームの土台なのでしょう。
しかし、こういった部分がおろそかだと肝心のノベルパートを楽しみづらくなるでしょうし、
全体的にしょぼくなっちゃいますよね。
決して目立つ部分ではありませんが、ゲームの土台を支えるシステム周り、
この部分で作品に関連したメディアを用いてデザインとして昇華する。
ストーリー自体には影響を与えませんが、ノベルゲームというメディアとして全体を見ると、
ある種のトータル的な作品演出として優れているのかなと。
ここまでコンフィグ周りのデザインが優れたゲームって今までにあったかな?
私がプレイした中だとこれが一番優れており、
同時にこんなに凝ったデザインをしたシステムを持つ作品はこれが初めてでしたね。
正直、この部分だけでもそれ相応の価値があると思っていますw


【総合】
まぁ普通にプレイしていて面白かったですし、
システム周りのデザインは非常に優れていましたのでトータルでは良かったのかなと。
しかしストーリー全体で中途半端な感じがあって完成度としては低いように思えました。
評価では良作と言った感じでしょうか。
もし、システム面のデザインを最大限に評価するのであれば、
これより優れたシステムデザインというのはおそらく存在しないので、
名作という扱いをしても良いようには思えますけどね。
でもシステム周りはゲームの土台部分で、本筋との直接的な関係はありませんからね…。
そこをどのくらい評価するのかは個人によるのでしょう。
私としてはある程度評価しているつもりですが、やはり本筋として直接的な影響が少ないことと、2011年はアダルトゲームも豊作だったということもあり良作になってしまうのかなと。
まぁ評価云々は抜きにして、
この作品が好きだという人の気持ちが十分に分かる作品でしたね。
あ、最後に、氷子ちゃんルートはまだですかね?

総合評価:B (良作)