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「トライアンソロジー ~三面鏡の国のアリス~」
2016, 8, 31 / WIN / ノベルタイプADV / 07th Expansion

3つの世界が1つになる時、アリスは目覚める。


【商品説明】
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【概要】
本作はノベル系ADVで、選択肢による分岐などはほぼありません。
一部では選択肢が出てきますが、間違ったものを選ぶと即BAD行きです。
実質一本道ですね。
3つの異なるストーリーがありますが、これも読ませられる順番が決まっており、プレイヤーへの自由はありません。

さて、私が本作を購入した最大の理由ですが、
それはナカオボウシさんが参加しているからです。
商品説明の画像を見てもらえばわかりますが、ナカオボウシさんは「Circletempo」という同人サークルのメンバーで、これまでに『MYTH』や『W-standard,Wonderland』(ダブワン)など素晴らしい作品を生み出しています。

特に『ダブワン』ではストーリーや演出、シナリオとどこをとっても素晴らしい作品でした。
そのナカオボウシさんが本作の演出として関わっているということで、これは買うしかないなと思い、購入に至りました。



【演出・ゲームデザイン・それに伴うシナリオ】
さて、そのナカオボウシさんが関わっている演出ですが、相変わらず良かったですね。
ここで演出について書きたいのですが、正直なところ『ダブワン』の感想で書いたことと言うこと自体は変わらないのでそちらの方を見ていただければなと思います。
本作に限って言うのなら『ダブワン』の時よりもレベルが上がっていましたね。
いや、上がっていたと言うとちょっと誤解があるのかな…
演出=動的な表現、とするのであれば『ダブワン』の時よりも向上していました。
動的なシーンでは立ち絵をぐりんぐりん動かしていましたし、ムービーで表現したほうがわかりやすい、インパクトを与えられるシーンではムービーを用いています。
単純にプレイしていて面白いと感じましたし、作品を盛り上げる要因をきちんと担っていたように感じました。



ただ、なんていうのかな…
ゲーム適した演出、つまりゲームデザイン寄りの演出についてはなんか微妙だったかなと。
前作のダブワンではゲームらしき世界の中ではRPGの戦闘画面を用意し、コマンド形式をとったりしており、ゲームとしての演出、トータル的なゲームデザインに秀でていました。
本作ではそういったゲーム寄りの演出方面は弱かったかなと。
演出はいいけどゲームデザインは微妙といった感じですかね。



テキストの表記は良かったですね。
テキストの表記方法についても、地の文が多く必要な場面では全画面形式にしたりしていましたし、3つの異なるストーリーごとに違う表現をさせており、それぞれに適した表現をとっていました。


表記の仕方は良かったのだけれど、シナリオのほうがなぁ…
例えばなんですけれど、ヘリコプターで窓から教室に入る場面があるとします。
その場面を演出で立ち絵などを用いて動的に表現しているとします。
その時に『俺はヘリコプターで窓から教室に入った』といった場面説明のシナリオは必要なのでしょうか。
動的な演出をした際のメリット(…とまでは言いませんが)として、
こうした場面説明のシナリオを削れることによるテンポの良さがを生み出せるのがあると思います。(まぁそのメリットがあるかないかは置いといて)

動的な演出で表現しているのにわざわざシナリオで表現する必要はあるのかな?
と疑問でした。
なんというか本作はちょいちょいシナリオと演出が噛み合ってないというか、
融合してないんですよね。

まぁシナリオライター3人もいますし、
演出と関わってなさそうだししょうがないのかもしれないですね。
ライターの方たちが演出を考慮したシナリオを書いていないなという印象をうけました。


【ストーリー】
ストーリーには期待していませんでした。
竜騎士だしどうせオチはクソだろうと予想していたらほんとに当たるとは思わなかったよ…


本作はよくあるオムニバス形式と見せかけて…みたいな感じですね。
3つのストーリーをそれぞれ一気に読むのではなく1/3ずつ呼んでいく形式。
Aシナリオpart1→Bシナリオpart1→Cシナリオpart1…のように。
先ず良かった点を挙げると、それぞれのストーリー自体は悪くなかったですね。
それぞれ作風も全く異なりますし、演出も優れていることもあり普通に楽しめました。

悪かった点をあげるのならばオチがクソ。まぁ相変わらずの竜騎士といったところですかね。
オチ自体もクソだけど、世界の謎の出し方も下手。ただ伏せてるだけを公開していくスタイルで、またこれかという感じ。
ラストにバトルが出てこなかったのは安心した。


【CGとか立ち絵】
CGはないです。
立ち絵について、本作は3人の原画家がいるのですが、
相変わらず竜騎士のキャラだけ浮いていました。
まぁひぐらしとかみたいに雰囲気とマッチしており、
かつキャラ全員が竜騎士の絵だったら、ああいう絵柄でもいいなとは思います。
しかし、本作では学園モノのストーリーの時に可愛らしい絵とあのごつい感じの竜騎士の絵が並ぶんですよね。
統一感がない。
萌えゲーみたいな学園モノの雰囲気の中、明らか竜騎士のキャラだけ浮いていましたし、
そのキャラ自体人の話を聞かないうざいタイプだったので不快でしかなかったです。


【システム面やらBGM】
一般的にノベルゲームでは右クリックをするとセーブなどを選択できるメニュー画面が出てくると思います。
本作もそのような感じなのですが、メニュー画面からゲーム画面に戻るとテキストが勝手に進むのがちょっと面倒だなという感じでした。
また、メッセージスピードが反映されない場面もあり、システム全般は便利とは言えませんでした。

BGMは良かったですね。
盛り上がる場面ではきちんと盛り上げていたりと、BGMとしての役割をこなしていたなとプレイしていて感じました。
あああと、ちょろっと出てくる選択肢でセーブ出来ないのはダメでしょう。

【総合】
演出が良かっただけのゲーム。
正直なところシナリオも企画もナカオボウシさんがしたほうが優れた作品になったよなと思わざるを得ない。

色々な人が関わったゆえに作品全体の統一感も感じられず、
オチも微妙ということでなんともまあ微妙な作品でした。こういった色々な人が関わる作品なら完全に尖らせた作風にしたほうが良いと思うんですよね…
なんかそれぞれのライターのいいところとか全く出てないように感じましたし、複数ライターの意味なくないですか。

まぁなんにせよ、『ひぐらしのなく頃に』で有名なサークルの作品にナカオボウシさんが関わったってのは大きいですね。
「Circletempo」さんは優れた作品を出しますし、同人界隈では有名ですが、商業向けを中心とする方への知名度は高いとは言い難いですから。
本作に関わったことでナカオボウシさんの名前が知れ渡り、『MYTH』や『ダブワン』といった素晴らしい作品がもっと広まるといいですね。



総合評価:B (良作)